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月刊メディカルサロン「診断」

私がいます。安心してください月刊メディカルサロン2015年11月号

恩人O氏に起きた健康トラブルに思う

私がプライベートドクターシステムを始めたのが平成4年ですから、もう23年が経過しました。当時60歳代だった人たちは、90歳前後になっています。
創業時からプライベートドクターシステムの会員になっていただいていたO氏が、先日突然に心不全を発症して、ある大学病院に入院しました。今は90歳手前です。
メディカルサロン創業時の頃、O氏は私をいつも夕食に誘い出してくれて、そのたびごとに、社会システム、人生の歩み方、戦後政治の裏表、メディア業界のことなどを教えてくれました。
「先生ね、脱税だけは絶対にやってはいかん」と厳しく教わったことを忠実に守ってきたことは、幾多の苦難を乗り越えるうえで、とても大きな価値があったと思います。
当時の私は喋るのが苦手で、黙ったままの男でした。しかし、O氏がいつも私をそばにおいて、流暢な日本語を駆使して人生訓を垂れるのを聞いているうちに、私も流暢にしゃべれるようになりました。言ってみれば、私の大恩人です。
食欲抑制剤のマジンドールを利用するダイエットシステムを開発できたのもO氏のおかげでした。平成4年の当時、100kgを超える体重を持っていたO氏に痩せてもらうため、その薬を使いだしたのがきっかけでした。
そして、その薬の使い方のノウハウを究極的に高めていけたのもO氏のおかげでした。食欲抑制剤を飲んだ日、飲まない日にO氏と一緒にする食事の中で、様々な見極めをさせてもらったものです。

そんなO氏はここ10年の間、プライベートドクターシステムの会員のままでしたが、来院することはたまにしかありませんでした。ときどき、電話で健康に関する相談はあったのですが、電話でいろいろ話しているうちに、逆にメディカルサロン事業の叱咤激励を受けるという展開の繰り返しでした。
メディカルサロンのプライベートドクターシステムにおいては、会員本人が自己の会社の社長としてバリバリ働いているうちは定期的に来院するのですが、息子に事業を譲ったりして、引退状態になると来院しなくなる傾向があります。
経営者というのは、自分の仕事をやりぬくために健康が大切だと思うようですが、リタイア状態になると、身体のことを構わなくなるようです。戦士として生き抜いてきたことの証のようでもあります。

プライベートドクターの本分

さて、90歳手前になったそのO氏のご長男から電話がかかってきました。「父が入院しています」と。
そう聞いた瞬間、私の中ではO氏の身体の状態は想像がついています。O氏の身体は、60歳代の時に徹底的にEPA体質にしてありましたので、心筋梗塞や脳梗塞の発症は想定しません。ガンなら、本人から電話がかかってきます。何よりもガンなら、いきなり入院するよりも、外来で見つかった時点で電話してくるはずです。
その1か月ほど前に、「やたらと体重が増えてしまった。食べすぎだよ」という電話がかかってきていたので、体重が増えすぎ、心臓に負担がかかった結果の心不全であろうことはすぐに見切れました。もしかしたら、心不全の結果で体重が増えていたのかな(体内に水分が貯留するから)とも一瞬思いました。
ご長男に聞いてみると、1~2日の治療により動けるようになり、車椅子で病室の外にも出られるようになったということでしたので、安心して数日後にお見舞いがてら、様子を見に行き、四方山の話をして帰ってきました。

私だからできること

その3週後のことです。Oさんのご長男から、再度電話がかかってきました。「父が診てほしいと言っているのです」とのこと。「何か、不具合なことがありましたか?」と尋ねると、「身体が震えて、吐き気がして、オエー、オエーとやっています」との回答でした。
直感的に、何かの薬の副作用であろうとわかります。「薬の副作用でしょうから、あの病院に行って、担当医に薬を変えてもらえばいいですよ」と答えました。
翌日、また電話がかかってきました。「今、病院に来たのですけれども、『副作用ではない。もう高齢だからそうなっているだけだ』と言われ、薬を変えてもらえなかった」というのです。「では、そのまま、薬をもってこちらに来てください」と指示しました。

来院したO氏を一目見て、私はびっくりしました。老い衰えた容貌になり、老人特有の身体を震わせながら、話しの合間に、ウウウウー、ウウウウーと喉の奥から音を発しています。会話もままなりません。つい1か月前の滑舌の良い電話の会話とは天と地の違いです。O氏の日ごろの姿を知っている私には、一見してわかる錐体外路症状です。薬の副作用に間違いありません。
もらっている薬を出してもらって、一つ一つチェックしたところ、やはり薬の添付文書に『重篤な副作用』として、「錐体外路症状」と書かれている新薬がありました。
入院した病院のドクターは、日ごろのO氏を知りません。だから、「高齢だから、そんなものだ」にしてしまったのでしょう。その薬を中止してもらったところ、翌日にはもう軽快し、翌々日にはいつもの颯爽とした老人に戻っていました。
日ごろの姿を知っている私だから判断できたのです。私がいなければ、その薬を飲み続けて、老い衰えて死んでいったことでしょう。

会員の皆さんへ

社長業をバリバリ遂行していた時は定期的に通っていたけれど、引退モードになった今はもう通っていないというプライベートドクターシステムの会員さんは大勢います。律儀なことに年会費だけはお支払いくださっています。
そんな会員の皆さん。身体に何かあった時は遠慮なく電話してください。「最近通っていないから」などという理由で遠慮する必要は一切ありません。特に入院したときなどは、真っ先に電話してほしいものです。
身体を守るために私は必ず役立ちますので、安心してください。でも、今のお姿を拝見するために、たまには顔を見せに来てくれたら嬉しいものです。

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