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月刊メディカルサロン「診断」

朝食に対する考え方2016年10月

朝食に対する考え方「朝食信仰」は情報操作だった?

その昔、15年以上前には「朝食を抜いてはいけない」と盲信されていました。テレビのあらゆる健康番組が、「朝食を抜くと健康に悪い」「朝食を抜くと、頭の回転が悪くなる」という論調で作成されていたのです。いわゆる朝食信仰です。
それに反論する人もいませんでした。いや、厳密には、反論する人をテレビ番組に出演させることはありませんでした。
食品会社などのテレビ番組のスポンサーたちが、朝食信仰を否定する者をテレビに出演しないように要求していたのかもしれません。いや、もしかすると、スポンサーを気遣って、ディレクターたちが番組編成の際に「朝食を抜いてもかまわない」と発言しそうな者を排除していたのかもしれません。

当たり前のことを言えない世界

私は1990年代の後半から、2000年前後まで、テレビ番組にしばしば出演していました。健康に関するコメンテーターの立場です。
みのもんた氏の「思いっきりテレビ」というのがありました。この番組も「朝食は絶対に食べなければいけない」という編成になっています。こちらに出演したときのことです。
話の流れの中で、私は「朝食を抜いてもかまわない」とポロリとしゃべったのです。前後の話の関係でそう言っただけなのですが、これがすぐ後に、想像を絶する大変な展開をもたらしました。
私がしゃべった瞬間、みのもんた氏の顔が曇り、コマーシャルへと導かれました。コマーシャルの間、みのもんた氏は不満顔で床をにらみつけ、そばの机の脚を蹴っ飛ばしています。後に聞きましたが、この時点で食品会社や農協から抗議のファックスが大量に入っていたのです(当時はEメールではなく、ファックスの時代です)。
「朝食を抜いてもかまわない」という一言が、食品業界、農協の機嫌を損ねたということです。ちなみに、前後の話というのは、接待があったり、夕食が遅い時間になったりなどの理由で、朝起きた時に「食べたくない」という気分のときは、朝食を抜いてもかまいませんという当たり前な話でした。

それでも正義は勝つ!

以後、私はテレビ番組に呼ばれることはなくなりました。いわゆる「干された」という状態です。まだ若かった私は、その時点ではテレビ業界の裏事情に気付いていなかったのです。
しかし、このことをきっかけに、恐るべきスポンサーの存在を知り、そのひとつである食品業界の利害に直結するので、健康、医療、人体に関しては、テレビ番組で正義、正当な話をすることはできないのだと悟りました。
そういえば、「尿酸値が高い人は、ビールをやめなさい」という当たり前な健康指導もテレビでは放映されません。ビール会社が巨大なスポンサーだからです。

今においては、製薬会社が巨大なスポンサーです。製薬会社の機嫌を損ねる番組は排除されてしまいます。
具体的には、「お医者さんは毎月、薬を出してくれますね。家の机の引き出しに、薬が余っていませんか。余っているときは、担当医に申告して、次の診察で出してもらう薬の量を調整してもらいましょう」と語る番組などは決して放映されないのです。

捨てる神あれば拾う神あり。「朝食を抜いてもかまわない」と語った私に対して、翌日、1本の電話がかかってきました。「知的生き方文庫」などで知られる三笠書房の編集長からです。「朝食の話をぜひとも本にしてほしい」という内容でした。
後日完成したのが、『お医者さんが考えた朝だけダイエット』(王様文庫/王様文庫)でした。この書籍は、発売するや否や、紀伊国屋書店の文庫本部門の第1位になり、それが16週間続きました。部数も60万部を突破し、いわゆる大ベストセラーになったのです。

摂取カロリーを「少なくするだけ」

その昔、テレビで放映されるダイエット番組というのは、「あれを食べたら痩せる」「これを食べたら痩せる」というものばかりで、「食べなければ痩せる」という当たり前の話がありませんでした。その背景、事情は、前述したとおりです。
だからかどうか、国民のほぼすべてが「食べ過ぎれば太る。食べなければ痩せる」という最大の基本を忘却の彼方に追いやり、「何を食べたら痩せるのだろうか」という浅慮な点にばかり関心を持っていました。そんな時代だったから、当たり前のことが意表を突いた話になり、ベストセラーになったともいえるのです。
「摂取したカロリーと消費したカロリーの差し引きが体重に反映される。だから、摂取カロリーを減らしましょう」という単純な訴えを、朝食の400~600キロカロリーをシンボルとして語った書物が、『お医者さんが考えた朝だけダイエット』です。
私は、「摂取カロリーを少なくしなさい」と説示しただけのつもりですが、シンボル部分というのは、独り歩きするものです。そのうち、健康雑誌が「朝食を抜こう」という特集まで組みました。このことに、今度は私自信が意表を突かれた気分になったものです。

それらの経緯をたどった結果、
「ここ1ヶ月、体重が変動していないなら、摂取カロリーと消費カロリーが釣り合っているということです。だから、今日からはここ1ヶ月の一日の摂取カロリーから、400キロカロリー少なくしましょう」
という名カウンセリング用語を生み出したのです。

子供は朝食を抜いてはいけない

一方で、子供の場合は、決して朝食を抜いてはいけません。午前中、学校で体育の時間などもある子供の場合は、朝食を抜くと身体が飢餓状態を認識し、背の伸びが悪くなります。飢餓を認識すると背の伸ばすための体内化学反応を止めて、身体を守ろうとするのです。子供は朝食をしっかりと食べなければいけません。

大人の場合は、「自己の朝食、どうあるべきか」に関しては、自分流で結論を出して構いません。

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