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「診断」治療で子どもと接していると

未来への心得の議論や健康体質作り、それだけでなく…掲載日2018年12月1日
月刊メディカルサロン1月号

真実は目の前に

人体に関して、実際に目の前で生じている現象があります。それを分析解明して、人体のことに役立てていくのが医学です。
レントゲンで「骨端線が閉じている」と言われていても、治療を施せば背が伸びだす子どもがいます。レントゲンでは見えませんが、顕微鏡レベルでは骨端線構造が維持されており、治療により、その部分から骨端線の再生がなされることがあるからです。
一方、「レントゲンでは骨端線が開いていると言われたのに、背が伸びません」という相談もたくさんあります。骨端線部分での軟骨細胞の増殖、肥大化に問題が生じているのでしょう。
従来の医学では、背が伸びる、背が伸びない、の判定をレントゲンによる形態学的所見にのみ依存していましたが、形態学的見地だけで背の伸びを判定することには限界があるのです。
小児の医学会はまだそのことを重視していません。あるいは気づいていないのかもしれません。「医学はこうだから、そんなことはあり得ない」とでも思っているのでしょう。目の前で生じている現象より、教科書で学んだ医学の方が真実だと思う「医の驕り」には、警鐘を発したいものです。

社会で立派に活躍してほしい

子どもの背が伸びるプロセス、メカニズムを研究し、その治療に取り組み始めて早くも20年が経過しました。治療上のキーとなる現象を多々発見し、治療に応用し、「伸びている子どもの伸び率を高める」「伸びる期間を延長する」「止まりかけている子どもの骨端線を再生させる」の治療技術を開拓してきましたが、ここ3~5年、診療中に別の思いが加わるようになってきました。
治療している子どもの未来の姿、「社会人としてどのように活躍していくのだろうか」ということが、とても気になるようになったのです。社会で立派に活躍してほしい、という思いが高まり、3つの質問をするようになりました。

  1. 「将来は、頭を使う仕事がいいか、身体を使う仕事がいいか?」
  2. 「人を使う人になりたいか、人に使われる人になりたいか?」
  3. 「ちょっとしたゆとりと安定のある人生を築きたいか、大成功か大失敗か、という野心的な人生を歩みたいか?」

という3つの質問を投げかけて、そこから子どもと議論することが増えてきたのです。

ご両親からみると余計なお世話かもしれませんが、感謝されることもしばしばで、何よりも、私の方が通院している子どもの未来のことが気になるので、その辺を議論してしまいます。
興味深いのは、その議論を聞いていて、親が「えっ、うちの子ども、そういう子だったの」と驚いたり、感心したりすることがけっこうあることです。

未来の健康は「EPA」で大安心

社会人になる未来像も気になりますが、私の本業は健康管理指導です。未来の健康状態も非常に気になります。背を伸ばす治療を行っている子どもは、言うまでもなく、成長期、あるいはその前後の子どもたちです。身体が大きくなる過程で、体質が形成されていきます。
食生活からできあがる体質というのは、自分の脂肪細胞内に蓄積される脂肪の種類で決まります。ここ50年、食生活が欧米化する中で、日本人の身体に蓄積する脂肪としては、飽和脂肪酸系、リノール酸系が増えてきました。
リノール酸が体内で変換されてできるアラキドン酸が、体質に強い影響を与えます。体内のアラキドン酸が増えると、炎症性疾患が増えます。アトピー性皮膚炎、関節炎、ぜんそくなどです。また、血栓性疾患も増えます。心筋梗塞、脳梗塞です。また、ガンでは、大腸ガン、乳ガン、前立腺ガンが増えます。

子どもの背を伸ばすには、肉、乳製品をたくさん食べるのがいいです。たんぱく質の摂取が重要で、そのためには、鶏肉、豚肉、牛肉をしっかり食べることが有効です。しかし、それに伴い、飽和脂肪酸系、アラキドン酸系の体質へと傾きます。背を伸ばす治療は、将来の健康に不安を残す治療でもあるのです。
将来の健康不安をなくすためには、成長期前後の時期に、青魚系の脂肪(EPA系)をたくさん摂取させてあげるのがいいです。この時期にEPA体質を作ってあげると、将来の健康のことは大安心です。しかし、それは、背を伸ばす生活スタイルと矛盾してしまいます。この矛盾はどうしたら、解決できるのでしょうか。
それらを解決するためにかなり知恵を絞りましたが、結局は、サプリメントでEPAを摂取してもらう、という答えしか出てきません。やや不満の残る解決策ですが、現実的には、それもやむを得ないところです。

おわりに

背を伸ばす治療を通じて、子どもに接して、子どもの未来を考えていると、ついつい人間関係を深めたくなってきます。社会人に向かう心得に関すること、健康体質を作ることなども考えてしまいますが、さらには、「この子の学業成績を上げてあげるにはどうしたらいいだろうか」なども最近はよく考えるようになっています。

本当に余計なお世話かもしれません。

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