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月刊メディカルサロン「診断」

医療改革の第一歩は、過体重患者への対応から掲載日2018年12月27日
月刊メディカルサロン2月号

本音を隠したキレイごと

平成元年ごろ、肝臓病の通院患者で多くを占めていたのは、非A非B型肝炎というものでした。輸血後に発症することが多いので、輸血後肝炎という名称もつけられていました。平成3年ごろ、肝障害のその実態が判明しました。C型肝炎ウイルスが発見され、単純に、そのウイルスの感染によるウイルス性肝炎と決着がついたのです。
この世紀の発見に肝臓病に携わる医師たちは、歓喜の声を挙げていました。これで、多くの人を救うことができる、輸血による肝炎の蔓延を防ぐことができる、と。

しかし、その一方で、肝臓病専門の医師たちの会合では、
「あ~あ、これで俺たちの仕事はなくなっていくよ」
という寂寥感があふれていました。C型肝炎ウイルスの発見は、その肝炎の患者が激減していくことを意味します。ということは、仕事がなくなっていくことが予感できるのです。
「いや、俺たちの現役の間は、まだ大丈夫だよ」
という声がむなしく響いていました。

医師にとっては、「患者がいるから仕事がある」です。患者がいなくなれば仕事がなくなるのです。だから、「患者はできるだけたくさんいてほしい」というのが最大の本音になります。「病気を根絶することが我々の望みである」は、本音を隠したキレイごとにすぎません。
戦争があるから軍人が必要になり、軍備の拡張が必要になる。だから軍人は、「戦争があってほしい」と願う。「戦争がない世の中を願う」というのは、本音を隠したキレイごとであり、それと同じ原理です。

医療費削減のベストソリューション

「予防医学の充実が必要である。それこそが医療費を削減する方策である」と政府は語っています。そして、その予防医学の実行部分として、「早期発見、早期治療」を謳い、検診の受診率を高めることを奨励しています。
「医療費の削減になる」は本当でしょうか。早期発見、早期治療を語り続け、医師にとっての新たな仕事先となる検診施設の設立と充実、天下り先となる予防○○協会の設立を訴えている限り、実に疑わしいものです。
私は、国民の健康を守る最大の方策は、「健康、人体、医療に関する知識の向上である」と説いています。全国民の健康、医療、人体に関する知識の向上こそが、予防医療の神髄であり、医療費を削減していく最も基礎に存在するものだという持論を持っています。
その私が見る限り、政府の方向性はベストではありません。単純明快に、「医療費を削減するための予防医療」といえば、ダイエット、つまり、体重管理指導があります。この医療を充実させることは不可能ではなく、政府がその気になれば、すぐに実現可能です。しかし、本腰を入れようとしません。この分野の医療に関して、知らんふりを決め込もうとします。それどころか、ダイエット医療の実施に関して、制限を加えようとしています。

労多くして益少なし

過体重は健康に悪い、とほぼすべての人が認識しています。栄養過剰時代において、「体重を減らしたい」というのは、人々が本能的に求めるものです。そして、体重を落としたいのに自力では落とせない、という人が大勢いるのです。
では、この過体重に対して、今の健康保険の診療現場ではどのように応じているのでしょうか。「体重を落としなさい」と医師は軽く話しますが、体重を落とすための具体的な指導は、きわめて幼稚です。なぜ、幼稚かというと、医師は、体重管理学を学んでいないのです。
と同時に、医師にとってダイエットの指導は、健康保険制度下では「労多くして益少なし」であり、患者の体重を減らしてあげたいと本気で願っていないのです。
つまり、冒頭で述べたように、体重管理指導の徹底は、メタボ系治療の患者を減らすことを意味しており、医師の本能に反するのです。
体重が多すぎるために、薬漬けになっている人がたくさんいます。糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、変形性膝関節症などです。また、心筋梗塞、大腸ガンの発症などが多いことも知られています。思う存分に食べまくって、体重が増えてしまった人のメタボ治療のために、生活に困窮している若者から徴収した金銭(健康保険の掛け金)を使って、薬の投与を行っているのです。

踏み出せない「はじめの一歩」


診療現場には、食欲抑制剤というダイエット指導に役立てられる非常に便利な薬があります。
この薬を使って、医療費削減の一歩を踏み出すことができます。
まずは、「過体重の人はある程度の体重まで落とさないと、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などの自覚症状のない病気に対する健康保険の利用は認めない」という決まりを作成します。
そして、食欲抑制剤の使用に熟練した医師を日本の各地に配置し、「これらの医師によるダイエット指導は、自費診療である、健康保険はききません」という制度にしてしまえばよいのです。しかしながら、その単純な一歩目すら踏み出せないのが、日本の医療なのです。
なぜ踏み出せないかというと、第一の理由は「患者が減ってしまうと困る」という医師側の本能、第二の理由は「医薬品売上が落ちると困る」という製薬会社の事情、第三の理由は「食べる量が減ると食品会社の売上が減る」という食品業界の思惑、そして第四の理由が「製薬会社と食品会社をスポンサーとしているテレビ局が、その辺を番組にすることができない」というマスコミ界の実情です。

これらの理由に後押しされて、政府や医師会は、食欲抑制剤に「依存性がある」などの難癖をつけることに躍起になっています。コレステロールの薬の重大な副作用は隠蔽し続けているのに・・・です。たばこ一つ禁止することができないのですから、やむを得ないのかもしれません。

まずは「ダイエット指導」から

私は長年、健康管理の観点からのダイエット指導に注力してきました。平成4年から平成10年ごろまでは、徹底的にダイエット指導の実践指導医療を研究してきました。
今までにダイエット指導を行った人は10000人を超え、食欲抑制剤を使用しながらのダイエット教育を施したのは3000人を超えています。依存性を出した者は一人もおらず、長期連用者も生まれません。メタボ系医薬品の薬漬けから解放できた人は、大勢います。
医師が確固たる意志を持っていれば、食欲抑制剤を使用するダイエット医療には、何の不安もないのです。その経験を国家のために活かせていない現状は悔しくてなりません。

私が、ダイエット指導の過程で経験した様々な法則と指導体系は、(一社)日本健康教育振興協会が発行する「体重管理指導士」の教科書にまとめられています。
医療改革のマイルドな第一歩目は、健康保険に取り入れられすぎた予防医療部分の改革です。特に、ダイエット指導という医療の取り扱いがキーになります。

「動かない相手を動かすには、動かざるを得ないように仕向けていく」

今後は、私の胸に蓄えられた秘策を次々と実践する、そういった展開にしたいものです。

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