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月刊メディカルサロン「診断」

健康管理学のうちの体調管理学を深めようかな掲載日2019年6月1日
月刊メディカルサロン7月号

人体を研究すると、様々な知見が得られます。最近は、遺伝子を追跡することによる「人類のルーツ」という観点が盛んで、非常に興味ある研究成果が得られています。
病気とその治療という観点からの研究は大昔から盛んでした。そして得られた成果は、臨床医学としてまとめられています。その内容は、診断学、治療学で成り立ちます。ある病的状態を訴える人を見て、その病名を予想し、検査で確定するのを診断学、治療の方法を考え、その治療を施し、成果を確認するのを治療学といいます。
つまり、人体の病的状態を研究した結果、その成果は、診断学、治療学という学問へと編集された、ということなのです。

当然、私は学生時代に、その診断学、治療学を学び、医師になってからは、その実践の最前線現場で、仕事しました。若いうちに、大学病院の内科外来も担当し、経験を積みました。
経験を積み始めて、かなり早い時期から、診断学、治療学というまとめは、医師の内部で活用するものであって、一般民衆の中では活用し辛いものであることに気づきました。
つまり、診断学、治療学は、医師だけが手に入れることができる「極秘の虎の巻」であり、それを使用できるのは、国家試験に合格した者に限られている、ということです。医師でないものが、うかつに気軽な気分でその虎の巻に手を出すと、「かえって手痛い目にあう」つまり、「生兵法はケガの元」というタイプのような気がするのです。

だから、患者には秘匿されてきました。そこから、「説明不足」という不満が患者の中から生まれました。
「説明不足」をめぐって、患者からの不満がどんどん高まる最中に、私は大学病院の内科外来を担当し、診療最前線にいました。「極秘の虎の巻」であるべき「診断学、治療学」と、その公開を求める患者を前にして、「医師と患者の接点、どうあるべきか」に関して、悩み、解決の道を探りました。
考えをどんどん深めた結論が、
「人体を研究して得られた知見を編集して、診断学、治療学が生まれ育てられた。それは医師というプロのために編集されたものであり、患者のため、あるいは、一般民衆のために編集されたものではない。人体知見の数々を、再編集して、一般民衆のための新しい学問にしなければいけない」
にたどりついたのでした。そこで、私は「従来の人体に関する知見を再編集して、健康管理学という新しい学問を創設しよう」と一念発起し、通常の医師とは異なる道を歩み始めたのです。

私が一念発起したときの医療社会は、健康保険制度の存在により、「病気になった人のみを迎える」の世界であり、一般民衆が期待する人間ドックや健康診断は、「病気になっている人」をふるい分ける装置に過ぎませんでした。だから、その中では、私が思い描いた健康管理学を実践していくことに矛盾、障壁が多すぎたのです。だから、健康保険制度を捨てるという異質な道への突き進んだのです。
臨床医学は、その成立の過程において、内科、外科、整形外科、婦人科、産科、眼科、云々へと分化してきました。病気になった人を診療するにあたって、その病気の種類や部位によって、専門各科が誕生したのです。
それらは、あくまで、病気になった人を対象としての専門各科です。一般民衆が求めていることの主体は、病気になる前の健康体から病気になる瞬間までの一連とその病気の詳細であって、病気になった後のことはそれほど知りたくない気配なのです。病気になった後は、「回復」「苦しみの継続」「死」の展開しかなく、そこに対してはどうなるかの結論だけ知りたいだけです。人々が知りたいのは、「なぜ、そんな病気になったのだろうか」という部分が中心になります。
「まさに病気になる前」に一般民衆に教え諭しておくべき学問が必要になるのです。その学問こそが健康管理学です。

病気にならないことを願って、人々は健康管理に取り組んでいます。そのブームは高まっています。しかし、この健康管理というのが、どうすることなのかを定義するのが難しいのです。どう定義しても、反論が生じます。それを考え続けていたところ、ある時、突然、思いついたのです。

健康管理とは、「90歳を超えても、頭脳明晰で、自分の足でどこにでも行けて、痛い・痒いがなく、意欲高く、見た目の姿は50歳」を実現するために取り組む諸行為である。

この思い付きにより、学問化への道は開けました。
その内容は三分類されます。寿命管理学、体調管理学、容姿管理学の三分類です。それらの思い付きは、平成11年9月25日の東京新聞の私の連載コラムで発表されています。

病気になれば、内科、外科、小児科、整形外科・・・のどれかへと誘導される。しかし、病気になる前は、寿命管理学、体調管理学、容姿管理学の3つだ、と割り切ることができました。いや、病気になったら、痛み、かゆみ、物忘れ、やる気が出ない、などのその諸症状は、単純に「体調が悪い」「身体の調子が狂っている」という表現に収束されるので、臨床医学そのものさえ、その三分類に分けられるような気さえしてきました。

さて、「痛い、痒いなどを含めて体調が悪い」という場合、その症状や悪い部位に応じて、専門科へと分類されますが、それは医師の視点での分類です。患者の視点は異なります。患者の思いは、「なぜ、そうなってしまったのか」が中心です。その観点から、「体調が悪い」を分類しなければいけません。それを考え続けてきましたが、次のように分類されそうな気がするのです。

  • 加齢系・・・加齢に伴う衰えによる体調不良。膝が痛い、腰が痛い、物忘れが増えたなど
  • 体内調節系・・・自律神経、ホルモン、免疫力など、体内を無意識の調節しているシステムの乱れから生じる体調不良。高脂血症、高血圧、糖尿病などもここに分類される。
  • 感染系・・・ウイルス、細菌、真菌、寄生虫などの微生物を起因とする体調不良
  • 心因系・・・やる気が出ない、楽しみや夢を感じない、などの心の問題から生じる体調不良
  • ケガ・外因系・・・打撲、切傷、骨折などのけがに起因する体調不良。虫刺されなども含む。
  • 体内固形物系・・・痛風、結石、血栓、ガンなどの体内で生じる結晶、固形物による体調不良
  • 過体重系・・・「身体が重い」から生じる体調不良
  • 血流不全系・・・狭心症、冷え性、記憶力低下など、「血流の低下」から生じる体調不良
  • 後遺症系・・・脳梗塞発症後などの後遺症から生じる体調不良
  • 難病系・・・政府が難病指定しているようなものに、遺伝、先天性疾患を加える。

というところになります。

診断学、治療学では細分化された大量の病気分類がなされていますが、健康管理学の観点では、こんなに少ない分類で済むのです。まさに、一般民衆向けの分類です。
それぞれをわかりやすくしていくことがこれからの課題となりそうです。

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