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風本流医療構造改革・論議編

その11「診療現場の役割」

厚生労働省や医師会が医療改革に関していろいろと述べています。この分野に関して、テレビ番組などのマスコミで語れる人がいないのが残念だと私は思っています。
マクロな視点から論議されているのはいいことだと思いますが、ときどき、ふと、患者と医師が接する診療現場に関して、「診療現場の役割」「診療の目的」という最もミクロな視点が欠けているのではないかと思うことがあります。

この「診療現場の役割」の答えが、「患者の治療をすること」という単純な回答をしているだけでは、いつまでたっても医療構造の改革が進むことはないと私は思っています。診療現場には、実は5つの役割があります。つまり、医師は5つの目的を実現するために診療を行っているのです。今回は、これに関して述べてみましょう。

診療現場の5つの役割

第1の目的は、何と言っても「患者の身体上の悩み、課題を解決すること」です。もちろん、精神上の課題を解決することも含まれています。病的状態を訴える人を迎えて、「診察により病名を予想し、検査により病名を確定させ、治療計画を立て、その治療を施し、治療の成果を確認する」というものです。その規模は医学の進歩と同時に、科学技術の進歩に伴い年々拡大しています。予防医学的要素が大きく導入され、また、治療終了後の確認行為が長く引き続いたりするようにもなりました。

第2の目的は、「研究テーマの遂行」です。医師は、病態を研究し論文にまとめて学会発表します。医学会は、学会発表、論文の数と内容が出世に影響していますから、中堅の医師はこの分野に必死に取り組んでいます。
患者から得られる情報をまとめることを臨床研究といいます。「こんな症状を訴える人を調べたら、意外なことにこんな病気だった」「当院には、こんな病気で通院している人が○人いますが、血液データの特徴はこのようなものです」などだけでなく、「こんな治療を施してみたら、こんな成果があった」なども研究課題になります。「試しにこんな治療を施してみたら・・・」というのは、深く考えると気持ちのいいものではないかもしれません。診療現場を利用して、研究活動をすすめているのです。大学病院など、もともと研究施設に付属する病院はこの目的が強くなる傾向があります。でも、考えてみると患者の費用で医師の研究を進めているのですから、おかしな気がしないこともありません。頻繁に採血される理由が見えてきたりもします。

第3の目的は、「医療機関を維持する売上を確保する」です。技術革新が著しい医療現場を維持するには莫大なコストがかかります。医療機関はそのコストを診療現場から稼ぎ出さなければいけません。医療機関は非営利組織でなければいけないといわれています。患者を治療するという目的を純粋に追求した結果としての売上で、医療機関を維持できれば何の問題も起こりませんが、診療報酬が引き下げられてくると、組織維持に必要なコストを捻出するために、売上を高めるための診療手法が発達することになります。政策的な立場ではさじ加減が非常に難しいところですので、ここで深く語るのはやめておきます。

第4の目的は、「新人医師を育成する」というものです。国家試験に合格したばかりの医師には、多くの臨床経験を積んでもらわなければいけません。経験なしに優秀な医師へと育つことはありえません。麻酔が効いて患者の意識がない間の手術現場は、新人医師の育成の場でもあります。また、診察室で記述に努める若い医師の姿を見かけますが、それもトレーニングです。これに対しては、患者側は「大人の対応」で応じていただきたいものです。

第5の目的は、診療現場が「義理を果たす」「借りを返す」という場にもなっていることです。高名な医師は、多くの関係者に取り囲まれています。高名でなくても研究施設の整った大病院の医師は、多くの関係者に取り囲まれます。その関係者の多くは製薬会社から送り込まれてきた人ですが、何かと「御用伺い」をしてくれます。秘書代わりになってくれることもしばしばです。医師は研究活動を進めるために、その取り巻きの方々にいろいろな頼み事をします。その結果、医師はその人たちに借りができたような気分になっています。その借りを返す場が、「診療現場」でもあるのです。エイズ薬害事件などの背景に潜んでいる問題でもありますが、診療現場を「義理を果たす」「借りを返す」ための場として重要である、と潜在的に認識している医師は少なくありません。

現状、日本では1つの病院に5つすべてが入り込んでいます。研究目的にさせていただいている患者から治療費をもらうなどの矛盾行為が遂行されているのです。また、医療機関の維持が難しくなるように政策的には仕向けられています。

私の医療構造改革は、医療社会を三分割することを基本設計図としていますが、診療現場の役割、目的を悟っていただくと理解しやすいと思います。前述した5つの目的は、明確に分割して医療機関を2系統に分けなければいけません。つまり、「従来の健康保険制度形式の医療機関」と「会計不要の公営病院」です。従来型の医療機関は、「患者の身体上の悩み、課題を解決すること」だけに集中し、その結果として、医療機関を不自由なく運営できるだけの報酬制度が定められ、「医療機関を維持するための売上を確保する」に対しては目的意識を持たずに済むようにして欲しいものです。また、「研究テーマの遂行」や「新人医師の育成」は、会計不要の公営病院で患者の治療を兼ねながら遂行して欲しいものです。そして、「義理を果たす」「借りを返す」という目的が全廃される日が来ることを私は願っています。

健康教育の遂行

さらに、三分割論を遂行するためには、もう一つの目的を診療現場で実行する医療機関が必要になります。診療現場を「健康教育の遂行」の場にすることです。私がメディカルサロンにおいて、毎回1人あたりに長時間の診療時間を設けるのは、その場で健康教育を遂行する目的に他なりません。三分割の3つ目であるメディカルサロン型クリニックは、「健康教育を遂行する医療機関」が原点になるのです。つまり、従来の医療機関には存在しなかった診療現場の役割、目的の第6番目がそこに存在するのです。

診療現場の役割

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