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月刊メディカルサロン「診断」

子供への訓え:知的資産、人的資産、名声、財的資産月刊メディカルサロン2014年4月号

「背を伸ばす医療」を振り返り思うこと

その人の身体の未来像はどうなるか?それを研究する学問を予想医学といいます。この予想医学は、健康管理指導の土台をなします。私は、その学問研究にまい進しています。

「子供の身長が将来どうなるか」

これは、ある人の相談をきっかけとして生まれたテーマでした。小児科の分野では、子供の最終身長は、両親の身長を足して2で割って、男ならプラス6.5cm、女ならマイナス6.5cmというような幼稚なレベルでした。
子供の未来身長を研究した結果、私は驚愕の事実に気づいたのです。それが、4歳時の身長が最後まで影響することと、第二次性徴期の±1年が身長の±5cmに影響すること、そしてよく伸びる2年があり、止まり行く3年がある、ということでした。その身長の未来像、最終身長予想の法則を打ち立てたとき、低身長を改善するための治療手法の体系作りが始まりました。そして、「背を伸ばす医療」に取り組み始めて15年あまり。その間に多くの子供たちとそのご両親に接してきました。
「背を伸ばしたい」という切なる思いをもって来院するということは、親子が共通の悩みを持っているということです。この悩みで、共に解決するために努力していこうという親子間の関係が作られていることもありますし、子が親を恨んで不平、不満を述べるだけという関係になっていることもあります。

私が四谷メディカルサロンを創業して以来、健康保険を使わないという中で構築した医療は、人間関係を大切にするという医療でした。病気を診るなら健康保険制度の中で十分です。その健康保険ではカバーできない医療があります。その医療を展開する上で、もっとも大切なのは、来院者との間で人間関係を構築することなのです。親子の悩みの奥に潜む人間関係をテーマにすることになるのは当然でした。

背を伸ばす医療に関しては、大喜びしてくれた人がたくさんいました。一方で残念な結果になることもよくありました。「止まり行く3年の中盤」という伸びる余力が十分にある頃までに来院してくれた場合は、ほぼ「治療してよかった」という成果を収めることができますが、「止まり行く3年の終盤で、ここ1年の伸びが1cmでした」という場合は、2cm以上伸ばしてあげられるのは、10人中2人くらいで、非常にうまくいっても、3.5~6cmまでの伸びでした。半数くらいが1~2cmの伸びで止まってしまい、10人中3人は伸びないか、伸びても1cm以内でした。必ず成果を収められるというものではなく、治療が確率論になりますので、残念な結果になることもあったのです。

子供たちへ 成功人生のために蓄えるべき3つの資産

さて、子供と接することに慣れてくると、私は持ち前の性格なのか本能なのか、人生のことをいろいろ教えてあげたいという気分になってきます。身長問題が原因で不穏になっている親子仲を解決するのは初期のテーマですが、人間関係の構築がすすむと、「今後の人生で成功していく秘訣」のようなものを説いてあげたくなってくるのです。その話の1つをお話しましょう。

「この世に生を受けて、両親の庇護下で育っていくなら、その恩返しの意味も含めて、昨日よりも今日、今日よりも明日、というふうに自分の資産をふやしていきなさい。自分は子供だからまだ増やさなくていい、というものではありません。日々、自分が持つ資産を必ず増やしていかなければいけないのです。では、資産とはなんだと思っていますか?お金のことではありません。
まず、第一の資産は知的資産です。勉強して学んで身につけたこと、それが知的資産です。自分が健康で五体満足であるなら、いつでも自分の頭脳の中から取り出せるもの。それを昨日よりも今日、今日よりも明日、と増やしていくのです。頭脳だけではなく、鍛えぬいた体力も自分が健康で五体満足ならいつでも取り出せるので知的資産です。学生時代はこの知的資産を増やすための時間がいっぱいあります。頭脳を鍛えて体力を高めなさい。決して時間を無駄に過ごしてはいけません。時間はすべての人に公平にしか与えられていないのですから。
知的資産を身につけようとする過程で、仲間ができます。その仲間を人的資産といいます。思いやりを持って人に親切にするとこの人的資産は増えていきます。自分が蓄えた知的資産で人にアドバイスをすると、この人的資産はさらに増えていきます。
知的資産と人的資産を蓄えていったら、次は名声を高めることに取り組みなさい。名声というのは、自分がいないところで人が自分のことをどのように噂しているかです。これはとても大きな資産なのです。
名声を高めるための最大の秘訣、それは親孝行をすることです。親を大切にし、親を思いやっている姿を内外に示しなさい。すると、自分の名声が高まっていきます。
知的資産、人的資産、名声。この3つを十分に蓄えて社会に飛び出しなさい。必ず、財的資産が後ろについてきます」

私はしばらく診療業務から離れ、長年の診療業務のエッセンスを学問的に整理整頓し、それらを中国、インドネシアなどアジア一帯に向かって発信しながら、一方では健康教育事業に本格的に取り組んで行こうと思っています。

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