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月刊メディカルサロン「診断」

忍従大国日本からの脱却・・・妄想をまじえて掲載日2023年10月31日
月刊メディカルサロン11月号

私はラーメンが大好きです。短時間で食べられるのがありがたいです。しかし、ラーメン店は1杯1000円の壁に苦しんでいるそうです。1000円を超えると顧客が急速に離れてしまうらしく、美味しいラーメンをいかに1000円以内で作るかの限界に戦っているというのがラーメン業界の姿だそうです。そして、原材料費の高騰等に伴い、バタバタと倒産しているそうです。近所のラーメン屋がなくなっていくのは、悲しい現実です。
一方、そのラーメン。海外では1杯2000円以上が当たり前のようです。単なる円安が原因ではなさそうです。日本における市場競争原理の問題でしょうか?

じっと我慢して、境遇のまま服従する人々

バブル崩壊以後、人々が生活する社会を形成していくことに関して、日本は何かを間違えてきたように思えてなりません。
政府と金融機関の過ちにより平成バブル経済の誕生と崩壊があり、以後、経済発展のバランスの何かが狂ってしまい、何の罪もない一般労働者は忍耐の生活を強いられました。凄まじい耐乏の中を生活しているのです。
その耐乏生活のはけ口にするために、成功者に対する過剰な弾圧、政府役人に対する過剰な不満、教育者、芸能人の破廉恥事件に対する過剰な喧伝までも行い、労働者の心を慰めてきました。そのはけ口として、SNSはちょうどいい役割を果たしてきました。
経済バランスの狂いのしわ寄せは、外食産業に見られます。ランチタイムの恐るべき低価格には異常性を感じますが、労働者の胃袋はその低価格により辛うじて支えられてきたのです。
平成バブル崩壊以後、日本の労働者はひたすら忍従を強いられてきました。ここでいう労働者とは、働く人たちを「主君」「将」「兵卒」に分けたときの兵卒に相当する人たちのことです。たとえば健康皆保険制度の中の病院で、まじめに必死に仕事している看護師は兵卒に相当しますが、その低賃金は驚きを通り越して恐怖に値します。苦しんでいるのは兵卒たちなのです。
その一方で大企業は太りました。バブル再来の不安を煽り、下請けに対して恐るべき低価格を強要し、一方では、投資家に対する高配当を実現しました。「主君」「将」に相当する人はその恩恵を有り余るほど受け取っており、その現象に対しては格差社会と名づけられています。
高配当を成し遂げた背景は、低賃金で働く労働者です。つまり、労働者は支払われている賃金価値以上の労働価値を提供してきたのです。だから、株や投資信託などの配当を受け取る者は、その配当の裏側に潜む労働者の苦労と忍従生活を思い起こさなければいけません。

「老後不安」が引き起こす負の連鎖

コロナ対策と称して、政府は莫大なお金を国民に配りました。常識的には、コロナ終息後にはそのお金が回転して、モノ、資金の動きが活発になり、インフレ化して好景気をもたらすのが当然です。しかし、お金を使うことにおびえ切っている日本国民は、その当然を実現できません。
その理由は簡単で、キーワードは「老後不安」です。政治家のうかつな一言や年金財政への不信から、「老後のためにお金をためなければ」が心を支配しています。コロナで食わられたお金は老後のための貯金になり、経済の好回転を作り出す原動力にならなかったのです。
「老後不安」は、実は現役世代への新たな付け回しを生み出しています。大学生の学費、大学生活の生活費を親が負担しようとしないのです。大学生は学生支援機構のローンを組んで大学生活を送っています。その親たちは自分たちが学生の頃は親が全部負担してくれていたのに、その自分が親になった今、子供の学費などの負担を避けるようになったのです。「老後のためにお金をためなければ」の思いのためです。だから、今の学生は大学卒業と同時に、200~800万円の借金を背負うことになり、その返済は40~55歳まで続きます。社会人になった瞬間から、必死の返済生活となり、すべてを切り詰めた耐乏生活を強いられます。
しかもその若者に、「高齢者の生活を支えるための年金資金を拠出せよ。賦課方式なのだからお前たち若者からお金を集めて高齢者に配るのが国のシステムだ」と強圧的に要求しています。さらに「子供を産んで育てよ」とも要求しています。若者には夢も希望もあったものではありません。そんな無茶苦茶な国になっていることに、政治家はまったく気がついていないように思えます。
忍従に耐えられなくなった若者の多くが、闇バイトに走っています。忍従を要求し続けるとどのような世の中になるかを示唆しています。若者の凶悪な事件も徐々にみられるようになりました。後になって、「あの頃は闇バイトの程度ですんでいたのに」という世の中にならないでほしいものです。
若者たちには、まじめに責任感を持って仕事し、技量向上の努力をしている人には、どんな仕事であっても大いに稼ぎ出せるようにしてあげるのが、今の時代には必要なことなのです。

あとは政治家の工夫と勇気だけ

世界的なインフレ傾向、金利上昇を受けて、円安が進行し、日本の輸入物価が上がりましたので、それを受けて「兵卒」の生活はますます苦しくなりました。政府はいろいろな対策を立てていますが、焼け石に水の感じです。
ガソリン価格問題など、ガソリン税が「とってから配る」のではなく「とるのをやめる」でいいのです。しかし、膨大な借金を持つ人がある程度の貯金ができても、その貯金が減るのが嫌なために借金の返済に充てることができず、悪循環に陥るときの心理と同じような心理が国家に内在しています。国家をあげてそんな心理になっているのですから、この国の将来がますます不安になってきます。
しかし、今、円安による輸入品の価格高騰、食糧事情の変化、戦争の勃発など起爆地雷が日本の中に内蔵され、何かを転機として忍従大国日本から脱却できる大胆な政策を展開する背景は整っているように思います。
欠けているのは、政治家の工夫と勇気だけとなっているのが今の時代ではないでしょうか。

妄想は果てしなく

平成バブル経済崩壊後のかじ取りが正しければ、今頃はどんな日本になっていたのでしょうか? 
私は直感的に、給与報酬は今の2倍、日常の消費財、飲食、家賃などの物価は今の2~3割高であったろうと推測します。株価、為替、不動産などの相場物は、相応の変化をすることでしょう。
となると、一つの妄想が芽生えます。令和6年1月1日をもって全企業は「兵卒」に対する給与報酬を2倍にして、すべての物品価格、家賃、下請け価格を25%アップすること、という強引な法律を作ってしまうのです。当然、年金も増額ですが、これは1.5倍くらいにします。「主君」「将」の給与報酬は2倍になるわけではないですが、自動的に照準設定されてきます。
コンビニの買い物や外食の費用が25%上がっても給料が2倍になっていますので、文句はありません。企業側は売上が25%増えるので、業態にもよりますが2倍になった人件費を吸収してしまえます。住宅ローンの返済額、学生支援機構の借入返済額は変わりませんので、2倍になった収入のおかげで、若い世代の負担が急速に楽になります。
その負担軽減感の中で、日用品や、やや高額な必要品の購入意欲が一気に高まり、経済は活性化します。ぜいたく品はもともと、主君や将が購入するので、購入意欲は変わりません。

給与報酬が2倍になるのですから、年金の掛け金の収入は2倍になり年金財政は容易になります。医療費の収入も2倍になります。国の借金も実質的に減ったことになります。もちろん国債を持つ人は、大損かもしれませんが、過半を日銀が持っていますので、そこは気にしないことにします。
妄想は果てしなく続きます。

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