月刊メディカルサロン「診断」
子育て終了後の女性の人生月刊メディカルサロン2005年11月号
心身が不調になる原因は?
「先生、私の妻を診てもらえませんか。どうも最近、精神的におかしいようなのです」50歳すぎの男性会員から、このように頼まれることがよくあります。
40代半ばの奥様とお会いして、「どうしたのですか」と尋ねると「身体がだるくてしんどくて・・・。何をやっても面白くないし、何の楽しみもないし・・・。もう死んでしまいたい気分です。昔から、更年期障害といわれるのですが・・・」
確かに年齢的には更年期障害の時期と一致しています。しかし、これはたいていの場合、更年期障害ではないのです。
女性は40代半ばまでで、女性本能として子育てに没頭しています。すべてを捨てて、全集中力をこめて、子供が独り立ちするようになったとき、つまり女性が40代半ばから50代前後の頃に、急に子育てから開放されるのです。そこで、「ほっとした」などといって喜んでいる女性はめったにいません。
子育てを終えて、ふと我に返ったとき強烈な虚無感に襲われるのです。子育て中は気を張っていたので「身体がだるい、しんどい」などと感じることはなかったのですが、子育て終了後に急激に疲労感を覚えます。
しかも、本来は美意識が高いのです。子育てが終了して自分の時間ができたために、鏡の前に立つと体重が増えてウエストのくびれがなくなった身体、しぼんでクスミやシミが目立つ老いた肌を真正面から見ることになります。少し動くだけでも疲れます。
「何か楽しいことをしよう」という気分にもなれません。子育てにエネルギーを使いきって気力も残っていないのです。「もうあの頃に戻れない」という思いが、重くのしかかってきます。
いくつも複合的に重なった思いが「うつ状態」を引き起こします。そして、「この先の人生、生きていても楽しくないじゃないか」という気分に包まれます。
容姿、体力、意欲を回復させて次のステップへ
「人にとってもっとも寂しいのは、生涯を貫く仕事をもてないことです」と福沢諭吉先生はおっしゃっていたように思います。メディカルサロンの女性スタッフには、私はいつも「生涯を貫く仕事を持ちなさい」と論していますが、昔はそのようなわけにはいかなかったことでしょう。子育て終了後のうつ状態は、生涯を貫く仕事を持てなかったゆえに生じているのです。
子育て終了後の虚無感から立ち直るために、うつ治療薬や更年期障害の治療薬に頼ってはいけません。まず体重を落として軽やかな身体にもどることです。そして、進歩した容姿、体力、意欲の回復医学を利用してください。肌を回復させることは難しくありません。
「気力、体力、見た目の姿」を回復させられれば、虚無感から自然に回復し、子育て終了後の第3の人生に向かって、次の旅立ちを迎えることができるのです。
夫はこのときこそ、奥様に「子育てへのお礼、ご褒美」として心身のリフレッシュをプレゼントとしてあげて、奥様を励ますべきだと思います。