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月刊メディカルサロン「診断」

健康学習運動を勃発させ、治療の選択権を語りたい月刊メディカルサロン2007年6月号

「医師の説明不足」から「治療の選択権」の問題へ

「医師の説明不足」をマスコミが重大テーマとし始めたのが、15~16年前になります。ちょうどメディカルサロンを創業した年にあたります。当時私は医学部の大学院生であり、また慶應病院で外来患者、入院患者を担当していました。
最初は、「説明して欲しい」「自分の身体の状況を詳しく知りたい」というストレートな思いから、「医師は説明不足である」というクレームをつけたに過ぎませんでした。

あれから15年以上、様相は大きく変わり、「ただ説明してほしい」ではなく、治療の選択権を得たいという思いへと進化していきました。医師の立場では、患者側に治療の選択権を与えることに何の問題も感じていません。しかし、問題は、患者側が適切に自己の治療を選択できるほどの知的レベル(健康、医療に関するレベル)に到達していません。

板垣退助の自由民権運動

思い起こせば明治の初頭、下野した板垣退助らは、国民に選挙権を与え、国民により選ばれた議員による国会を開設してもらいたい、という建白書を政府に提出しました。政府の回答は明快でした。

「今の日本国民は、江戸時代からの風習で上の意向に従うだけの国民である。また政治に対してもまったく未熟である。この状況においては、国民に選挙権を与えるわけにはいかない」

そこで、板垣退助らは、国民の政治に対する知的レベルを高めようと思いました。故郷の土佐に戻り、地元の人達にまず政治への関心をもってもらう、という運動を起こしたのです。当然最初は小さな集会での講演だったことでしょう。(というより小さなセミナーだったかもしれない)。「自由は土佐の山間から」といわれたものです。
その運動が全国に広まり、自由民権運動と名づけられ、やがて国会が開設されることになりました。途中、暴漢に襲われたとき、「板垣死すとも自由は死せじ」と叫んだことは有名です。

「健康学習運動」の必要性

治療の選択権を語る前に、まずは「健康学習運動」というものが必要です。テレビ番組などで、健康医療の分野を面白おかしく放映すると受け入れられることは実証されています。しかし、系統的に、医療、健康を学んでもらう、ということに参加してもらえるかどうかが問題であり、それこそが課題になります。

メディカルサロンの本社が、新宿区四谷の丸正食品総本店のビルに移りました。ここを拠点として、その難問に取り組んでいこうと思っています。「健康学習運動は、四谷の丸正から」を実現したいものです。

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