月刊メディカルサロン「診断」
望みの頻度月刊メディカルサロン2009年12月号
人間関係においては、相性という問題が重要なのは言うまでもありません。社会を見渡してみると、プライベートな世界では、なんとなく相性のあうものどうしで人間集団がつくられています。最近は、婚活ブームというブームがあるそうですが、男と女が出会った場合も相性の問題は避けて通れません。価値観が多様化した現代においては、双方の人間的実力より、相性問題のほうが重要になっている気配です。
仕事関係であれ、男女関係であれ、出会ったその瞬間から相性問題が発生しています。相性関係が発生する手順は、まずはルックスの相性です。そして、コミュニケーションの相性です。
最初の接点で相手に対して好感をもてるかどうか、つまりルックスの相性から始まり、会話したときのコミュニケーションの相性へとすすみます。その2つをクリアーしてはじめて、次のステップにすすめるのは、意思の自由度の高い分野においては、当たり前のことです。
意思の自由度の低い分野というのがあります。仕事上の上下関係や取引関係です。ルックスとコミュニケーションの相性があっていなくても、どちらか一方が他方に歩調を合わせなければいけなくなります。当然、ストレスが発生します。人間関係ストレスの初歩的なものです。女性社会なら、「あの子の存在だけでも許せない」と叫ぶ者もいて、人事コントロール上の重要課題になります。
さて、社会問題として、離婚率の上昇、少子高齢化が挙げられています。それらの問題の前提には、男女の相性という問題が含まれています。相性問題が原因で離婚率が高まり、あるときには少子化とも関連するのです。男女一組がセットになるとき、当然、ルックスの相性とコミュニケーションの相性がクリアーされています。では、離婚、少子化にいたる何の問題がその後に発生しているのでしょうか?
私はその問題を深慮して、一つの答えを導き出しました。それは「望みの頻度の相性」という問題です。「会って一緒にいたい」と思うペースの相性のことです。
仮にある男女ペアにおいて、男が7日に一度会いたいと思っているとします。そのペアになっている女のほうは、6日に一度会いたいと思っているとします。この2人が融合すると、時を経るうちに、わずかに会いたいと思う周期が早い女のほうが、一方的に会いたいといっている状況へと進展します。たった、1日ずれているだけでそうなるのです。そして、女のほうは「あなたは全然私を満たしていない」と不満を持ち出します。男と女が逆のケースもしばしばです。会いたいと思う自分の気持ちが少し早くなるほうが、相手に不満を持つことになるのです。お互いに会いたくないと思っているわけでなありません、でも不満が高まるのです。相手に問題があるわけではなく、単に頻度の相性が原因で自滅しているのです。
お互いに相手のことは大切な存在だとは思っています。しかし、その頻度がたった1日や2日ずれるだけで、一方通行であるかのような錯覚を作り出してしまいます。ここに端を発して、お互いの不満が高まり、ストレスの源となり、男女仲が崩れていくのです。「毎日一緒にいたいと思っている人」と「3日に一度くらい一緒にいたいと思っている人」が、一緒に生活を始めたら、3日に1度がいいと思っている人の心の中には、かならずストレスがたまっていきます。
男女が一緒に生活を始めると、毎日会っている状態が生まれます。最初は不便がなくなり、望んでいた思いを満たされてお互いに満足していますが、遠からず、自分の本能の中に持っている「会いたいと思う頻度」の相性問題がでてきます。
毎日一緒にいたら喧嘩ばかりすることになるけれど、1週間に一度しか会わなくなったら、いつもお互いが冷静で相手に親切になれる、などということは日常茶飯事のことです。「なんで、そんなに怒っているの?」という疑問を持ったときは、「会いたいと思う頻度」が相手の望む範囲を超えているからなのです。
ここまで「会いたいと思う頻度」で語ってきましたが、これらの相性を私は総合して「望みの頻度の相性」と名づけました。「会いたい」という思いだけでなく、何事につけても「望みの頻度」が重要なのです。
ゴルフ好きの男女がいました。男は週に一度はゴルフに行きたいのですが、女は1ヶ月に一度で十分でした。この2人は2人ともゴルフが好きなはずなのに、「望みの頻度の相性」を冷静に調整しなければ、ゴルフのせいで仲が悪くなっていくのです。
人間関係が完全にこじれてしまう前に、つまり、一つの人間関係予防学としてこのことを知っていて欲しいと思います。人間どうし、生涯仲良くしていきたいと思うなら、お互いに何かを望む頻度を一緒に調整しようとする心構えが必要です。