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月刊メディカルサロン「診断」

食事と身体づくり月刊メディカルサロン2011年1月号

「たくさん食べなければ、身体がでかくならないぞ」
「そんなに食べていたら太ってしまうぞ」
「しっかり食べなきゃ、力が出ない」

昔は食べることと健康、身体といえばそのような程度の話しかなかったと思います。科学、医学が進歩して、食事と身体づくりの関係に関しては驚くほど進歩しました。この分野は、詳しい話をすればきりがありません。

三大栄養素といえば、炭水化物、脂肪、たんぱく質です。身体を動かすカロリー源として重要なのは炭水化物(と脂肪)で、体質に影響するのは脂肪です。がっちりとした身体を作ったり、筋肉骨格系に影響するのはたんぱく質です。
たんぱく質を多く含む食べ物として、われわれは『肉』『魚』『大豆』を連想します。今回は、この3種の使い分けを語ってみましょう。

肉、魚、大豆の使い分け

子供の背を高く、身体を大きくしたいとき、最も適しているのは肉です。牛、豚、鶏のどれでもいいです。たんぱく質摂取の効率は、魚や大豆より肉が圧倒的に優れています。学童期に、肉をたくさん食べると背が高くなります。それも、朝食から肉をしっかり食べると、より身体は大きくなります。子供の身体を大きくしたいときは、朝から肉をガンガン食べさせてください。
一方、子供の背を高くするときに最も適していない、つまり不適なのは大豆です。大豆にはイソフラボンという成分が含まれており、性ホルモン系を充実させる傾向があります。大豆食品といえば、納豆、味噌、枝豆、豆腐、豆乳を連想します。これらの大豆食品をたくさん食べる子供は、体内の性ホルモン系の充実が早く、つまり、通常は思春期の進行が早くなり、背の伸びが早く止まり始めます。低身長治療を行うときは大豆摂取を中止することがしばしばです。

子供の脳機能を高めたいときは、魚が優れています。これは、魚のたんぱく質そのものではなく、含まれている脂肪分の影響が大きいです。青魚の成分「EPA」による脳血流の改善と「DHA」による記憶学習機能の向上が期待されるからです。「DHA」を最も多く含む魚はイカです。子供の頭を良くしたいときは、イカをガンガン食べさせればいいでしょう。

中高年女性が若々しい体を維持したいなら、大豆が優れています。大豆のイソフラボンが女性ホルモン類似の作用を持つからです。これに関しては、思春期の子供を採血することにより、本格的に作用することを私は確認しました。思春期後半の子供で大豆摂取の多い子供は、女性ホルモンであるエストラジオールの血中濃度が上昇しており、大豆摂取を中止すると下がります。これは作用が本格的であることを物語っています。更年期障害の予防、治療には大豆食品をたくさん摂取することをおすすめします。

コレステロールを下げたい場合は、肉を減らして魚中心の食生活にしてください。これは昔から言われているように、肉に多く含まれている飽和脂肪酸が、体内でコレステロール合成の原料になってしまうからです。飽和脂肪酸とは、冷えると固まる油を連想してくだされば結構です。

吹き出物やニキビができやすい場合は、肉、大豆を中止し、魚食に徹してください。肉に多く含まれる飽和脂肪酸、大豆に多く含まれるリノール酸は、いずれも吹き出物、ニキビの原因物質であり大敵です。ニキビがよくできる人は、3ヶ月間、毎日サンマを食べていれば、吹き出物は消えていきます。

冷え性の人は肉をガンガン食べてください。肉は小腸の中で消化、吸収される際に熱を発生させ、身体をぽかぽかと温めます。たんぱく質ならばすべて熱を発生させるのですが、肉は効率がいいのです。ただし、指先への血流が悪く四肢末端が強く冷える人は、魚も食べなければいけません。とはいえ、魚の摂取だけで抹消血流が改善するほどにはなりませんので、この場合は、サプリメントで「EPA」を補充するのがいいかもしれません。

たんぱく質は、筋肉、骨格、皮膚、コラーゲンなど人体の重要な構成成分です。一定量以上をきっちりと摂取しないと老化が早くなります。

以上のような基本原則をよく覚えて、日々『肉』『魚』『大豆』は一定量以上を必ず食べるようにしてください。

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