月刊メディカルサロン「診断」
この先、心配な20歳代後半女性。日本は大丈夫?掲載日2025年3月31日
月刊メディカルサロン4月号
はじめに
高額医療費の本人負担額の引き上げが政治的な課題になっています。日本国民は、医療サービスは安いものだと思わされていたので、高額の医療を受けざるをえないとなったときに、自己が負担する額も微々たるものであると思い込まされていました。その自己負担額が急増することには、混乱、困惑が生じるのは当然です。
しかし、そこに不満を述べるわけにはいかない、という面もあります。高額の医療サービスを受けるとにき備えて、民間保険があったからです。多くの生命保険会社が、「こんな病気になったら、こんなに医療費が高額になる。それに備えて、この保険に加入しましょう」とアピールしていました。
そのアピールに耳を貸さなかったのがいけなかったのだと言われれば、それもそうだなあということになります。
高額の医療サービスを受けるなら、国が治療費の大半を負担せよと言っても、その「国」の原資は主に現役世代から徴収しています。その現役世代かの中では、20歳代から30歳前後の女性中心に、奨学金ローンにあえいでいます。
老後の資金が必要だからといって、子供への学費を出さず、子供に奨学金ローンを背負わせた世代が浮いた費用で民間保険に加入すればよかったのですが、加入していなかった。そのツケをさらに奨学金ローンを背負わせた現役世代に負担させようという意見にはなかなか納得できません。負担を若者世代につけまわそうという発想に、政治が毅然とした態度で向かうのも必要な気がします。
幸せなのはどっち?
ところで、今回の議題はそんなことではなく、奨学金ローンに苦しむ20歳代後半の女性に関する話です。
20歳代後半女性と言えば、30年前までは大半が専業主婦になっていました。今の時代は特に都会部において、多くが独身です。今の独身の20歳代後半女性が幸せなのか、専業主婦時代の20歳代後半女性が幸せなのかを検討してみたいと思うのです。
女性の社会進出が十分に進み、夫婦共働き時代が完成しました。平成バブルの前までは、「結婚したら退職する(寿退職)」「25歳までに結婚する」「30歳までに子供を産む」「妻は子育てに集中して幸せな家族を築く」という、いわゆる専業主婦時代でした。
あの頃の社会の景色に関して、私には一つの思い出があります。マクドナルドのハンバーガーが1個100円で売り出されたとき、いわゆる100円マックの時代です。その100円マックを求めて、ほぼ全世代のサラリーマンが大行列を作っていました。たまに女性が並んでいました。その女性へのインタビューでは、「うちのワンちゃんのエサにちょうどいいのよ」と応えていました。男性達は歯噛みしていましたが、専業主婦たちは、友達同士で2500円~5000円のランチを食べに行っていた、という景色です。しかし、男たちは不満を述べませんでした。当時の男は、「男は24時間仕事してでも家庭を守る。専業主婦の妻と家庭を守り抜く」ということに誇りを持っていたように思います。
専業主婦が当たり前の時代
私は大学2年生の頃に、ある塾で講師のアルバイトをしていました。その塾で、仕事後の食事会に誘われたことがあります。塾の講師たちは日中は学校の教職にもついてもいましたので、かなりの知識人たちです。その人たちが二派に分かれて議論していました。
一方は、「俺は妻には仕事させない。男のプライドに賭けてもパート一つさせず、主婦業に集中させる」という人たちでした。もう一方は、「俺は妻には三食昼寝付きは認めない。パートに出て仕事してもらう」という人たちでした。大学生である私はその議論を聞きながら、「妻には仕事をさせるなど論外だ。家庭をきっちりと守らせるのが当然だろう」と思ったものです。昭和59年の頃です。
その専業主婦時代。女性は25歳までに結婚し、26~30歳は出産し、以後は子育てに励んでいました。当然、仕事はしていません。男性は、大量の残業、出張をこなして、残業収入、出張手当を豊富に得ると同時に、給与には、扶養手当、家族手当、住居手当などが加算されており、けっこうな収入を得ていました。まさに、一家の大黒柱というのにふさわしかったのです。その状況で、夫が妻に対して、どのように振舞うかは、まさに個々の問題でした。
その専業主婦時代には、夫が妻に対して横暴な振る舞いや言動をする者も現れ、それに耐えるしかなかった妻たちを中心に、やがて専業主婦であることへの不満が出現します。
妻にする女は処女に限る?
ところで、専業主婦時代に、男どうしの会話で思い出に残っている会話があります。私の学生時代ですが、男友達同士の会話では、「俺は妻にする女は処女でなければいけない」というのがかなりあったのです。自分は女遊びに盛んなのに、「妻にする女は処女に限る」というのです。その言い分は、「俺は結婚したら何が何でも家庭を守る。命懸けでも家庭を守り、妻を幸せにする。だから、その妻に対して、『昔あの女とセックスしたことがある』という他の男の存在を認めない、許さない」というものでした。
私はその当時から結婚するという選択を考えていませんでしたから、そんな話の輪に入ることはなかったのですが、その言い分には十分に納得できたものです。当時は、確かに処女性の時代でもあり、「身体を許すのは生涯でただ一人と決めています」という女性もかなりいました。処女性の美学というのが確かに存在したのです。処女性の美学と専業主婦は表裏一体なのかもしれません。
平成バブルの時代には、女性の「性の解放」がまず進みました。女性の活動姿勢が明らかに変貌し、処女性の美学は消滅しました。それが専業主婦時代の消滅の始まりであるような気がします。
「家庭内の閉じ込められている逼塞感」「家庭を守るという制約」から解放され、社会で活動するという自由を知ってしまったら、もう後戻りはできません。共働き時代へと一直線に進みました。
共働きが当たり前の時代
さて、共働き時代になって、女性は幸せになったのでしょうか?
専業主婦時代の20歳代後半の女性と共働き時代の20歳代後半の女性を比較して、みなさん、どう思いますでしょうか?
一つの大きな変化は、女性が仕事するようになったからという理由で、親が娘の学費を出さないようになり、その分、娘は奨学金のローンを抱えることになったことです。この経緯を???と思う人のために、少し説明します。
専業主婦時代は、結婚するまで娘は親元から離れることはなく、寿(ことぶき)退職と同時に親元を離れるという慣習でした。仕事する期間が短かったので、その頃は、女性が長期のローンを組むことはありませんでした。女性の社会進出に、親の老後不安が重なって、小泉政権時代に、奨学金の名目で、学生が容易にローンを組めるようになったのです。つまり共働きの社会習慣が、女性が社会人になると同時にローンを抱えているという実態を作り出したのです。
さて、奨学金ローンを抱えて社会人になった女性たちは、収入があるという理由で、親元を離れて一人住まいの自由を求めるようになりました。「自由を求めて、命までも捨てる」のが人類の歴史ですので、「自由を求める」という本能を抑制することはできません。
入ってはくるが出ていくものも多い・・・
社会人になったからといっても、一般のOLの収入は多くはなく、切り詰めた生活を余儀なくされます。それに奨学金ローンが重くのしかかっています。女性は男に比べて競争心が強く、「他の女に無関心でいられない」という本能も持っています。それが美容への出費を必要不可欠なものにしてしまいます。30年前の専業主婦時代は、まつげエクステ、まつげパーマ、アートネイル、脱毛などなかったのですが、いまは、必須のものになっています。
女性にとっての美容系の出費は毎月の継続出費になってしまいます。男性にとっては、美容出費は不要で、それに相当するものは女遊びの出費ですが、これはこっそりと出費するものですので、抑制することが可能です。しかし、女性の美容系出費は、表に見えているものですので、抑制することができません。
増えている詐欺被害
奨学金ローンに美容系出費。自動的に、20歳代後半の女性の生活は苦しくなってきます。さらに、昔と違って今は、男と女が飲食費を「割り勘」にする時代です。ある女性から、若者の間ではラブホテル代まで割り勘になっているという話を聞いたときは愕然としたものです。
それだけではありません。女性にはストーカー被害があるのです。「家まで誰かにつけられている」という事態になると引越するしかなくなり、想定外の出費が生まれます。引っ越し資金に関して、消費者金融は容易に高利の貸し付けをしてくれます。
20歳代後半の女性にとって、不測の出費はまだあります。男からの詐欺被害が異常に増えているのです。先日、20歳代の男が逮捕されました。200人以上の女性から総額一億三千万円以上をだまし取ったという容疑です。出会い系のアプリで知り合った女性から、それも200人以上からというのですから、どんな手口か不思議です。これに関して、ある40歳代の美容師の女性が私にコメントしてくれました。
「最近の20歳代後半の女性にとって、出会い系のアプリは性欲なのですよ。男を選ぶにあたって、写真だけで決めています。年収や仕事内容、価値観、趣味、思想などどうでもよく、サイトに並んでいる男の写真を見て、『この男にしよう』と決めます。『結婚したい』『付き合いたい』というのは眼中になく、容姿だけを見て「この男とセックスしたい」になるのです。男の人がソープランドに行ったときに、女性の写真の中から「今日はこの子」と一人を選ぶのと同じ感覚です。だから、会ったらほぼ即日にセックスします。すると、女はそれが愛情に変わってしまうのです。セックスした際にお金をもらったら割り切ってしまえます。しかし、そうでなければ、愛情に変わってしまうから、また会いたいと思ってしまいます。その気持ちの隙をついて、投資系やロマンス系の詐欺事件が発生するのです」
理解できるような、理解できないような話ですが、とりあえず、論調、語調の淀みがなく「お金をもらったら割り切ってしまえます」とケロッと話すことに驚きました。専業主婦の処女性時代とは全く異なる時代になっています。そういえば、今の若い女性は「ていそう」を漢字で書けません。意味も知りません。
おわりに
都心で一人住まいを始めた20歳代後半の女性たちの未来、大丈夫なのでしょうか?
ローンを抱えているという現実から、おそらく結婚するわけにはいかないという心理があるはずです。ローンを抱えている状態で、子育てする余裕など生まれるはずがありません。収入がそうそう増えるはずもありません。それなりの会社のOLをしているという立場上、身バレ、顔バレはまずく、キャバクラなど夜のバイトもできません。そもそも、「男に媚(こび)を売る」ことを仕事にできるのなら、最初から違う人生を歩んでいます。あっという間に時間は過ぎ去り、出産年齢は超えてしまいます。晩婚化は進んで当然です。少子化は進む一方です。
女性には閉経前後に体調不良という落とし穴が潜んでいます。結婚もできず、子育てもせず、貯金ができず、生活破綻と表裏一体の人生を歩む中での体調不良が何を意味するかなど一目瞭然です。生活保護法予備軍と言っても過言ではありません。
女性の社会進出に始まり、男女共働き時代が到来しましたが、それは本当に良かったのでしょうか。多様性を受け入れる時代と言いながら、政府や世のシステムは、夫婦共働きモデルへ一直線に見えます。
このままでは、財力のある親の娘は成功人生になりますが、親に財力がなければ、よほどのことがない限り、困窮人生になるのが見えています。
そんな日本を救う方法はないものでしょうか。抜本的な解決策が生まれるのを期待するしかありません。