月刊メディカルサロン「診断」
アラ・サルーテの今年の目標月刊メディカルサロン1998年1月号
私が慶応病院で入院患者と接していたときや外来を担当していたときには、医療や病気、人の身体に対する患者側の基礎知識の不足にはずいぶんと泣かされました。医療の事柄は、どんな人でも一生のうちに一度は必ず関係する問題です。それなのに医療、人の身体についての一般の人達の基礎知識があまりに低いのです。基礎知識不足のために病気気分になっている人や、医療不信に陥っている人も大勢います。
「インフォームドコンセントを重視して丁寧に説明しようとしても、患者側の基礎知識不足のためにコミュニケーションをとるのが極めて困難だ」「人の身体や医療の仕組みについて、もう少し学んでいればこんなふうにはならなかったろうに」というケースに多くであいました。その後、メディカルサロンを開設してからは、そんな経験を背景にして、医療、人の身体については義務教育のレベルでもっと学んでいなければならないという主張を掲げてきたのです。
ただ主張するだけでなく、実際に行動してきました。顧問医師としての立場から一人一人の健康管理指導にあたるのと同時に、「医学的根拠の明確な健康管理学の普及・啓蒙」「エレガントで明るい高齢者社会の創造」をテーマに講演、セミナー、本誌の制作などで活動してきたものです。
それらの地道な努力が認められたのか、先日、NHKから出演を要請する話を承りました。NHKといえば「◯◯大学医学部教授」や「◯◯病院名誉院長」などの肩書を重視するような気がします。そんな肩書をもたない、しかもまだ34歳の若い医師を起用しようというのですから、賛否両論で局内紛糾の中をかいくぐって最終的に選考されたのでしょう。意外な気がしますが、なにはともあれ、これまで常に社会正義を第一義に活動してきたことが認められたような気がして、スタッフ一同みな喜んでいます。
私の声が全国の表舞台で届くのかと思うと、重大な社会的責任と、ますます勉強を積み重ね、世に貢献していかなければならないという使命を感じます。また、これまで長くお付き合いして下さり、私を育てて下さったメディカルサロンの会員の皆様にもこの恩恵が行き渡るように努めていかねばならないと思っております。
さて、話は変わって本誌アラサルーテ※を舞台としての今年の目標を述べてみたいと思います。本誌はもともとはメディカルサロンの会員に、健康関係の情報やメディカルサロンの行事予定、近況報告などを提供することが目的でした。それが、内容的にも、またデザイン的にも少しずつ成長し、今では読者(会員)の皆様に、生活を豊かにするための多くの知的資産を提供することがメインテーマになってきたように思います。
本誌は、いわゆるメディアですから、執筆者と読者とをつなぐ役割を果たしています。今年は、「一方通行的に伝えるだけ」の一般的媒体機能の枠を飛び越えて、一歩前進し、「執筆者と読者との直接対話型媒体」「必要に応じて読者が執筆者にセミナーや電話を介して直接相談できるシステム」を包含する媒体機能を果たせるようにしたいと思っております。その目標は、「読者の皆さんには、生活をより豊かにするためのいろいろな知的分野の顧問がいますよ」という形式に作り上げることです。
本誌執筆にあたって下さる人達は、知的アドバイスの提供を生涯テーマにしていますが、「◯◯社の顧問として事務的に業務を遂行しています」というような安穏とした立場ではなく、常に頭脳を鋭敏に研ぎすまし、「知恵を絞る」ことを使命と感じている人達です。
読者の皆様にとっても、弁護士、医師、公認会計士、不動産プランナー、ファイナンシャルプランナー、経営コンサルタント、カラーアナリストらのアドバイザーと必要に応じて相談できる窓口を設けておくことは将来かならず役に立つはずです。
私は従来より、「衣食住がとりあえず満たされた日本にとって、まず大切なのは知的資産を高めることである」と考え、「大いに学び、自分の知性を高めなさい。そして知人には優しくしなさい。すると名声が高まります。その名声をしたって人的資産が形成されます。その人的資産を主体に将来のことを考えていくのです」と説いてきました。今年は説くことから、実践をお手伝いできる一年にしたいものです。
※「Alla Salute」は2000年10月号より「月刊メディカルサロン」に誌名変更しました。