月刊メディカルサロン「診断」
真の名医は・・・月刊メディカルサロン1998年6月号
数年前に、ディズニーランドの創業者ウォルト・ディズニーの話を聞きました。彼は25回会社を作り25回倒産し、そして26回目に創った会社がディズニーランドだったそうです。すばらしい話だと思いました。
でもちょっと待ってください。25回倒産して、また26回目の会社を創れるっていったいどういうことなんでしょう。日本では一度倒産してしまえば、「すべてを失ってその人の生涯は終わり」というのが当たり前にされているはずです。その点を追求して考えていくと、人の能力を大切にし、能力ある人に対する応援を惜しまないアメリカの姿を想像します。だからこそアメリカンドリームという語が生まれるのでしょう。ひたすら夢を語るウォルト・ディズニーに何かを感じ「おまえのいうことならいいよ。社会正義のためと思ってこの財産を提供しよう」という人が次から次へといたのでしょう。
1年半前、祖国バングラデシュの窮状を述べ、祖国の繁栄に役立ちたい、自分の夢も実現したいと語るカジ・マフジュール・ハクという人間に出会いました。私の頭の中でウォルト・ディズニーの話と重なり合いながら、私は彼への応援を約束し、2億円以上の資金を集め、彼の祖国内でのブラックタイガーの冷凍加工工場の建設を成功させました。日本国内の複数の人から集まった資金でバングラデシュ人が祖国で工場を創ったという話は実は諸業界を仰天させています。日本人気質の中では絶対に不可能だと思われていたことなのですから。現地金融機関からの運転資金の借り入れもきまり、これからいよいよ工場が稼働します。この先、利益を上げられるかどうかは彼の腕次第でしょう。応援してくださった人たちに大きなリターンを生み出したいと彼は張り切っています。彼が目先の運営に失敗しても私は応援を続けるつもりです。
先日、ずっと以前から私との縁も深いF氏が、あっと驚くコンピューターソフトを開発し話題になっています。このコンピューターソフトをめぐり、業界は騒然としています。大手企業からの受注も殺到し1~2年後ぐらいの入金予定額は膨大な金額になっています。これまでは数人のスタッフでソフト開発を行ってきた会社ですから会社としての仕組みは十分整っていません。急速な人員拡充、特許申請などかなりの額の資金が必要になっています。金融機関や大手企業はF氏が資金繰りで苦しむことを逆手にとって、我が組織の傘下に入れと要求してきています。F氏は私のところへ資金応援を求めてきました。私は応援を約束しました。F氏の会社はきっと大きく成長し、株式公開への道を歩むことでしょう。
F氏との会話の中からいろいろなことを考えました。開発者であると同時に経営者であることがその人の意欲を最大限に引き出し、信じられないパワーを生み出すのです。そのような人を生かすか殺すかは資金の動きに多くを依存しています。独立志向のある開発者を一企業の一開発員として取り込んでしまい、その能力を半減させようとするシステムが日本には伝統的に存在するようです。その伝統はそろそろ払拭され、新しい自由なる方向性を獲得しなければならないと思うのです。
アメリカならその頭脳を破格の報酬で迎え入れようとするでしょう。または、彼を盛り立てて大企業づくりの応援をすることでしょう。日本では島国根性から発する隣人へのジェラシー体質があだとなり、むしろこの頭脳を封じ込めようとする方向で事態は進行しているのです。私の縁故の世界では島国根性的であってはならないと思っています。
私はそのような現状を憂えて、ただ文筆家として筆を執っているのではありません。自らの力を最大限に振り絞り、企業誕生に関しては従来の病的日本型伝統を治療し、自由成長的アメリカ型の社会を日本国内に実現させようと先陣を切って進むつもりです。「真の名医は国の病を治す」というのですから。