月刊メディカルサロン「診断」
一歩抜け出す月刊メディカルサロン2000年10月号
喜ばしいことなのか、悲しいことなのかよくわかりませんが、年代を経るごとにあらゆる人為的事象は成功と非成功に分かれていきます。
産業界においても、人間社会においても成功、非成功の分かれ目は、単純にまずは「一歩抜け出す」というところから生まれます。産業界では、一歩抜け出すのが非常に難しい時代になったような気がします。高度経済成長時代のように、「ワッショイ、ワッショイ」と掛け声をあげながら、皆で成長していく時代ではなくなり、いい表現をすれば円熟市場、悪い表現をすれば過飽和市場になっています。
この時代には、利益が少しでも多いほうに取引先を変更することが日常茶飯事になりますので、「人間関係を固めておけば大丈夫」という傾向が薄れてきます。また、特殊な技術を持っているつもりでも、その技術による利益の大きさが知られるとすぐに同様の技術があることをアピールする組織が生まれてきます。また、「利益が大きいのだから」という理由で、取引先から値下げを強要される気配が生まれてきます。
時代の花形に見えるIT産業も、給料をもらっている開発者が自分の仕事に対して権利を主張しようとする傾向が強く、企業内の組織体制は極めて脆弱といえます。機転の利いた外敵が現れるまでの繁栄といえるでしょう。
とにかく、企業が利益を確保するのが難しい時代になりました。現代のようなすべてに過飽和の時代では、ある企業が一歩抜け出すというのはまさに至難のように思えます。
それと同じように、組織内における人間関係において、一歩抜け出すのも実に難しいようです。人より一生懸命仕事をしていい業績をあげても、だからといって「自分は頑張っているのに、他の社員はたいして仕事していない」とアピールすると、たちまち人格が低下してしまい、プラスマイナスゼロになってしまいます。ひとよりいい成績を上げて、なおかつ他の人への思いやりを示せて、はじめて一歩抜け出すことができるようです。
そのことに気がついている人でも、なぜかそのとおりに振舞えません。その裏側には、自分を見ている上司が、業績を認めてくれているのか不安になる心理が働いているのでしょう。また、今日は遅くまで残業して仕事したから、明日は手を抜いてもいいやと思うと、これまたプラスマイナスゼロになります。
仮に一歩抜け出したからといって、その抜け出した状態に対する対処が甘いと嫉妬を招くことになります。その嫉妬がやがて恨みに変わり足を引っ張ることもしばしばです。となると、裏側に嫉妬をつくっているなら、やはり一歩抜け出したとは言い難くなります。とにかく、一歩抜け出すことの難しさは大変なものです。
実社会の四方山を切り抜けて、成功者になったとしましょう。ところで、最後にまた一歩抜け出さなければ最終の成功者になれないのです。最後の抜け出す一歩とは、健康の問題です。成功者どうしでは、より長く頭脳明晰で生き抜いたほうが抜け出したことになます。秀吉と家康、健康勝負で勝ったほうが最終勝利者になったことはいうまでもないでしょう。
いつも繰り返していますが、健康管理の究極は、「重病にかからないことを盲目的にあてにするのではなく、重大な健康トラブルが起こりようのないカラダをつくること」がもっとも大切ですよ。