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月刊メディカルサロン「診断」

マイ・カルテ・クラブの真意月刊メディカルサロン2001年4月号

医師と患者間の完璧なコミュニケーションを成し遂げるのは現実的には難しいと思います。

医師にはもともと話し好きの人はめったにいません。また、特化した高レベルの専門知識があるために、患者が理解できるところまで専門レベル的に低下させた話を診察現場で一日中繰り返す精神的持久力にも限界があります。一方で、患者側は、「もっとわかりやすく」「もっと丁寧に」「もっと我が身を考えて」と徹底的に要求したくなるものです。いってみれば、昨今起こる医療関連のさまざまな問題は、「わがまま」と「わがまま」のぶつかり合いから生まれているような傾向が強いのです。
また、病院組織を維持していかなければいけないという経営サイドの思惑も関与します。とにかく、「これが理想だ!」という医療スタイルを築くのは難しいのです。

だからといって、現状でやむをえないかというと、そういうわけではありません。最低限の改善は必要です。最高は難しいが必要最低限は達成しなければいけません。医師、患者、経営サイドの各立場からの最大公約数的妥協点を見つけ出さなければいけません。

私がメディカルサロンを舞台に活動しながら、以上のような背景を熟慮し、現実行動の中で見つけ出した妥協点。それが、医療現場において、この文庫本「マイ・カルテ」を医師と患者が協力してつくりあげていく、という点に集約され、その医療スタイルの実現を提唱することになったのです。
医師側は、多少の面倒と緊張感がともないますが、診察現場で患者と一緒になって、この「マイ・カルテ」を作成してください。そこまでの妥協と努力は必要です。

患者は、医師と協力して作成している「マイ・カルテ」をもとにして、自分がどのようにその「マイ・カルテ」を活かしていくかという主体性の問題に帰結させてください。「マイ・カルテ」に正確に記入してもらったら、十分に満足してください。それ以上の要求はとりあえず控えましょう。そして記入してもらった「マイ・カルテ」の活かし方を考えてください。「マイ・カルテ」の活かし方は、当クラブが指導していきます。

マイ・カルテ・クラブを運営していく真意は、「医療現場の意図の適正化と医療提供サイドの緊張感の向上、技量向上、患者の主体性の向上、医療現場におけるトラブルが起こりようのない医療システムづくり」です。その結果、保険医療制度に立脚したうえでの、世界に冠たる医師患者間の二人三脚体制の医療体制を成し遂げることを目指したいと願っております。

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