月刊メディカルサロン「診断」
サプリメント開発への歴史月刊メディカルサロン2002年6月号
「食養生」と「食源病」
メディカルサロンは医療機関です。したがって医薬品を扱うことができますので、サプリメントを扱うのは予想していませんでした。それなのにいつのまにか、サプリメント開発に力を注いでいます。今回は、それに関する思いを述べていきます。
私達は毎日いろんなものを食べています。口から摂取したものだけを栄養源として身体のすべての活動をまかなっています。身体の活動のために必要なものはかならず食べなければいけません。しかし、食べ過ぎると太ってしまいます。塩分をとりすぎると血圧が高くなります。アルコールを飲みすぎると肝臓が悪くなります。肉類ばかりを食べていると動脈硬化がすすみやすくなります。ただたくさん食べるだけでなく、食べるものを調整するという問題も必要なのです。
若いときは、ただ好きなものを好きなだけ食べていました。しかし、食べ物が健康状態に大きな影響を与えることに気がつき、年齢とともにだんだんと食べるものを気遣うようになってきます。食品に含有されている栄養成分や栄養バランス、食べる総量を考えて食べるようになってくるのです。
食養生(しょくようじょう)という言葉があります。病気にかかったときは、安易に医薬品に頼るのではなく、食べ物に工夫を凝らして治そうと試みることです。鎌倉時代の書物には、「ノドが渇いて水がたくさん飲みたくなる飲水病には、桑粥が効く」と記されています。食べ物で治そうとする典型的なお話です。
医食同源という言葉があります。食の乱れが病気をもたらすので、まずは食を正すことが大切であるという考え方です。現代医学のもとで考察しても、そのとおりという面が多々感じられます。
食源病(しょくげんびょう)という表現が、1977年にアメリカ上院栄養問題特別委員会の作成による「合衆国の食事改善目標」と題したレポートに記されました。このレポートによるとアメリカで死因のトップになっているガン、心臓病、脳卒中などは間違った食生活が原因の「食源病」であると記されたのです。
食養生、医食同源、食源病、いずれも奥深い意味を持った言葉です。無制限に、無差別に食べていると体調不良になるだけでなく、早死にすることになるでしょう。
時代に合った栄養摂取
近代栄養学、分子生物学、生化学、医学の進歩により、いろいろな食物の成分が分析できるようになりました。そして、食物に含まれるどの成分が、身体にどんなふうに作用するのかを研究できるようになったのです。
研究は続けられ、多くのことがわかってきました。「ある食物の、何という栄養素が、どのように作用して、身体にどんな効果を出しているか」ということがはっきりとしてきたのです。そして食物に含まれる成分を健康の維持増進のために利用しようという試みのもと、サプリメントまでもが誕生しました。
社会構造が複雑になりました。多忙な生活を強いられ、また、考え事の量が増えています。そして、ストレスを感じている人がたくさんいます。脳内で消費されてしまうビタミン類の量も昔に比べるとずいぶん増えてしまっているでしょう。過去のどの時代よりも栄養素がたくさん必要になっています。
では、必要な栄養素を補う食べ物はそれを満たしているのかというと、それが十分に満たされているとはいえないのが現状です。野菜については栽培方式の多様化に伴い栄養成分の含有量は減っています。また、肉食の傾向がすすみ、脂肪摂取量が増えてしまっています。どの人にも栄養素の偏り、不足が関係しているといえるでしょう。
各個人が体調良好に生活するために、どうしても補わなければいけない栄養成分があるはずです。そのような成分は、食事で十分に補われるのが理想ですが、無理して食事をたくさん食べたり、嫌いなものまで頑張って食べたりするよりも、サプリメントで補うのが柔軟な考え方かもしれません。
時代の流れは、医薬品による治療から食生活の工夫による治療、そして食生活改善による予防へと変化してきました。その流れの中でサプリメントを自然に開発するようになったような気がします。