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月刊メディカルサロン「診断」

プライベートドクターシステムの誕生月刊メディカルサロン1997年1月号

あけましておめでとうございます。今回はプライベートドクターシステムが生まれでたきっかけのお話をいたします。新年早々、お誕生の話で目出たい1年にしましょう。

医師になって4年目の春、ある高名な大先輩医師とゴルフに行ったときのことです。朝食後にその大先輩が一錠の薬を取り出し内服しました。

「あれ、先生、なにか治療中なのですか」
と尋ねたところ

「ああ、これはアスピリンだよ。別に病気じゃないけど、これを飲んでおくと心筋梗塞の発症率を40%下げることができるんだよ。安心だからね」

それを聞いた私は驚きました。「そんな医学もあったのか」と。それまでに学んできた医学は「病気になった人を診断し治療する」という医学だったのです。「今、健康な人が、積極的に医学を活用して病気の発症率を下げる」という新しい医学をそこに初めて感じたのです。

そういえば・・・以下のような事実は数多く知られていました。

  • 日本に住んでいる日本人には胃ガンが非常に多い。しかし、同じ日本人がハワイに移住して、2世、3世になると胃ガンの発症率が減ってくる
  • 日本人は欧米人と比べて大腸ガンがかなり少ない。しかし、同じ日本人がロスアンジェルスに移住すると、大腸ガン発症率は世界一になる
  • グリーンランドに住んでいるエスキモー民族の心筋梗塞発症率は、同じエスキモー民族が本土デンマークに住む場合と比べて5分の1から10分の1にすぎない

同じ遺伝子を持っていても、生活スタイルの違いで病気の発症率が全然違う・・・生活スタイルは各個人でまったく違うが・・・その違いを大前提とした上で、各人に最も適切な健康管理を具体的に指導できれば・・・その人の長生き確率は全然違ってくる。

そこで、その分野の医学論文を世界中から集めてみました。すると上記のような疫学的事実が、医学的に一つ一つ解明されてきており、それに基づいた具体的な健康管理の指導内容も見えてくるのです。

「そのような医学を健康管理学と名付けよう。そして一人一人に丁寧にその医学をアドバイスし、長生き確率を高め、活力あふれる生活を営んでいただくことを目的とする医療を築いていこう」そのように考えて、会員制の健康管理指導システムであるプライベートドクターシステムを誕生させました。

→次号へ続く

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