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月刊メディカルサロン「診断」

「一億人の新健康管理バイブル」から(前編)掲載日2017年12月6日
月刊メディカルサロン1月号

私が自由診療となるプライベートドクターシステムを始めたのが平成4年。あれから、25回の正月を迎え、今回26回目の新年を迎えることになります。
診療現場の問題点を指摘し、その革命的構造改革に向かう志を立てて創業したのはいいのですが、当初はまさに、五里霧中、試行錯誤の中を必死に前進する毎日でした。健康保険を捨てて、内科領域の自由診療を遂行するのは至難でした。
重大な岐路になったのが、平成7年の大学院のときです。今後のことに関して、教授と話し合うことになりました。その際に勇気を出して、「自己の道を進む」という決別宣言的な話をしたのですが、教授の寛容な言葉で締めくくられたことは心に残り続けています。

さて、その平成7年の秋、私は一冊の書物を完成させました。「一億人の新健康管理バイブル」(講談社)です。その「はじめに」と「おわりに」を読み返してみると、「えっ、あの時、すでにそんなことを話していたの?」という衝撃的な思いにとらわれます。今に至る25年のすべてが、まさにそのとおりなのです。

今回と次回で、その「はじめに」と「おわりに」の全文を紹介したいと思います。

「一億人の新傾向管理バイブル」(講談社) 
はじめに

病院に行ったとしましょう。診察室でのやりとりのなかで、あなたは医師と心を結び合わせる会話ができますか。体の不調を訴えて病院に行ったのですから、世間話ではなく、病気や医療の話でお互い通じ合わなければならないのです。

病院の「診察室」という窓口で診療に携わっていると、訪ねてくる患者の医療知識があまりにも乏しいことに、はっきりいってあきれてしまうことが多いのです。診察室での医者と患者のやりとりは、証券マンに「株って何ですか?」、税理士に「税金って何ですか?」、または不動産プランナーに「相続って何ですか?」と質問し、返事を求めている様子に似ています。

私たちは、健康・医療とは切り離すことができない生活をしているのですから、本来なら学校教育か、それに準ずる場で健康管理に関するある程度の知識を得ていなければなりません。その知識があってこそ、医師とあなたは結ばれるのであり、あなたの健康が守られていくのです。健康管理や医療に対する知識がなかったために、有意義な人生を「無念の早死に」で閉じた人たちの姿を、我々医師はいやというほど見てきました。

「健康管理」という4文字が耳慣れて久しくなりましたが、健康管理とはどういうものなのかを知り、自分にとって、もっとも適した健康管理がどのようなものなのかを明確に答えられる人は皆無のようです。
「自分の健康状態を分析し、それに応じて、医学的根拠のある生活体系を築き、病気にかかわらず、活力あふれる生活を営み、結果として長生きできるようにすること。そして、それが健康管理に関する、自分自身の知性と判断力を中心としていること」
これが健康管理です。では、あなたにとってもっとも正しい健康管理はどうすることなのでしょうか。 

「健康管理のために○○を行っている」という人は、何を根拠にそれがもっとも自分に適した健康管理であると思っているのか、考えてみたことがありますか?「ご自分の健康管理、どんなことをしていますか?」と尋ねられたら、なんと答えますか?

  • 「毎朝、ジョギングしている」
  • 「夜、ぐっすり眠っている」
  • 「緑黄色野菜を多くとっている」
  • 「年に1回、人間ドックを受診している」
  • 「○○という健康食品をとっている」
  • 「脂っこいものを控えている」
  • 「休肝日を設けている」

などと答えているだけでは、まだまだ健康管理の認識が低いといわざるをえません。
健康管理とはどうすることなのか、ほとんどの人はイメージがつかめていないようです。

医師を紹介してもらったときに、
「ああ、お医者さんなのですか。じゃあ、何かあったらお願いしますよ」
そう挨拶したことはありませんか。40歳以上の人の「何か」の70パーセント近くは、ガン、心筋梗塞、脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)のいずれかです。つまり、「何か」あってからでは遅いのです。医師に対しては、「何も起こらないようにお願いしますよ」と挨拶するべきです。

  • 「毎年、人間ドックを受診していたのに、発見されたときは手の施しようがない進行ガンだった」
  • 「健康そうで、毎朝ジョギングしていたあの人が・・・」
  • 「つい昨日のパーティーで元気そうに談笑していたのに・・・」
  • 「医者になんてかかったことがない、と誇らしげに語っていたあの父が・・・」

などということはけっして珍しいことではありません。むしろ、ふつうにあることなのです。その人たちは健康管理の方法がどこか間違っていたのです。病気になってから、人間ドックのせいにしてはいけません。「人間ドックがどれくらい頼りになるのか」に対する知識を含め、健康管理・医療に対するあなたの知識が少なかったことを反省するべきなのです。

ある人の健康状態を分析し、病気になりにくくし、その人がもっとも長生きできるように工夫する医療、つまり、予防医療はとても進歩しました。心筋梗塞の発症を予防する方法、大腸ガンの発症をおさえる方法、脳梗塞が起こりにくくする方法、胃ガンの可能性を予測する方法、胃ガン・肺ガン早期発見の新しい方法、あなたにとっての有害食事、あなた固有の健康管理指標、あなた独自の連続飲酒可能量・・・これらを、あなたは何もご存じないのではありませんか。医学を学び、知識を得て、進歩した予防医学を活用し、健康増進、長生きに役立てるべき時代が来ているのです。

最良の健康管理とはどうすることなのか。まず予防医療というものを学ばなければなりません。「あれはダメ。これもダメ」というのが健康管理ではありません。「あれもいい。こうすればいい。これも大丈夫」というなかから、自分にとって最高の健康管理を考え、実践するのです。予防医療の本質は確率論です。自分が健康で長生きしていく確率をもっとも高めるための方法を論じ、実践できるようにいたしましょう。

本書は、健康管理というものを今後自分の知性でとらえ、考え、実践していく上で、最も重要な医学的知識をできるかぎりわかりやすい表現で簡潔にまとめました。会員制で営む健康管理指導システムを実践してきた著者の経験を、あなたの健康管理に対する知的レベルの向上と長生き計画に取り組もうとする意欲の増大に役立てていただければ幸いです。

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