月刊メディカルサロン「診断」
サプリメントは進化して第4栄養素に掲載日2018年4月3日
月刊メディカルサロン5月号
サプリメントと医療
「サプリメント」という用語が社会に出回り、社会に定着し始めたのは、1990年代の後半でした。それまでは、健康食品、略して「健食」と言われていました。
1995年に出版した私の著作『一億人の新健康管理バイブル』(講談社)には、まだ「サプリメント」という用語は使われていません。「健康補助食品」という語も用いられていません。
一方、1997年に私が開発したクロムのサプリは、その名称を付けるときの候補として、「メディカルサプリ」という語が挙がっていましたので、その頃には、サプリメントという語は生まれていました。いずれにしても「サプリメント」「健康補助食品」とも、その名称は、1990年代の後半の産物です。
さて、サプリメントは「効果」があるのでしょうか?多くの人の疑問です。法律上は、宣伝広告などで「効果がある」と謳ってはいけないことになっています。医薬品との差別化が必要だからですが、同時に、使用者となるユーザーが惑わされることを警戒しているのです。
その昔、実際に「ガンに効く」というふれこみで、何十万円、何百万円もするような高額の健康食品を販売する悪質業者がいたものです。それらを規制することは必要です。
サプリメントが誕生したころ、医師に診察室で、「サプリメントは効果があるのでしょうか」と聞くと、たいていが「そんなもの、効くはずはない」「そんなもの、意味はない」と言下に否定したものです。
具体的には、グルコサミンの誕生が典型的でした。 「膝が痛い」という人にグルコサミンを投与すると、確かに痛みが軽減します。サプリメントが世に出始めた当初は、その分野に強い関心を持っていた研究者だけが、「グルコサミンは効く」と知っていました。
しかし、その頃、整形外科の医師に診察室で「膝の痛みに、グルコサミンが効くと聞きましたが・・・、」と尋ねると、「そんなもの関係ない。効くはずはない」と答えたものです。さらに、「効くなら医薬品になっているはずだ」と重ねたものです。
食事療法の一環
サプリメント否定派の医師に、「食生活が欧米化して、いくつかの病気が増えたと言われていますね?」と尋ねると、「その通り」と答えます。「では、食生活が欧米化したら、身体の何が変わるのですか」と尋ねると、明確に答えることができません。医師は、口から摂取する食事が身体に何かの変化をもたらし、そのことが病気の発症が関与していることは知っているのです。しかし、なぜか同じく口から摂取するサプリメントは否定するのです。
ビタミンB1が不足して「脚気」という病気が発症し、やがて心不全を起こして死んでしまうことを医師は知っています。治療はビタミンB1の補給です。本来は食事で補給されるものです。しかし、「治療にあたって、食事なんて関係ない。処方する医薬品がすべてである」と多くの医師は、思い込んでいます。
食事療法の重要性を知っていても、「そんなのほとんど関係ない。私が処方する薬こそが、唯一、患者を救うものである」とまで、医師は思っています。
病気を患っている患者は、何かにすがりたいという思いを持っています。その思いが、医薬品や手術以外に行くことを医師は否定するのです。自分のテリトリーを冒されたような気分になるのかもしれません。「病気の人は私にだけすがりなさい」というおごった気持ちが心を支配して、患者の心を無視しているのです。
そんな医師がよく口にするのが、「患者本位の医療」という言葉です。そんな言葉を吐く医師は、患者本位の医療を行ったことはありません。患者本位に医療をすすめるというのは、患者の心を救いながら治療をすすめるという意味です。実際にそれを行うと、「患者と一体化した医療」という表現に代わります。「患者本位」という表現を用いている医師はまだまだ未熟です。
話がやや横道にそれましたが、ここで述べているのは、「医師の皆さんは、食事療法の一環としてサプリメントを利用したいと思っている患者の気持ちを理解しなさい」ということです。
生化学反応を補助する
人体のあらゆる活動は、体内で生じている莫大な量の化学反応の結果です。身体を動かすことも、脳内で考えごとをするのもすべて化学反応です。化学反応に問題が生じると、病気が発生します。その化学反応を操作するのが「治療」にほかなりません(外科手術を除く)。
化学反応の基本式は
A + B → C + D
です。
ここで、→の方向への化学反応を促進するのが、体内の「酵素」の役割です。この酵素に影響を与えるのが医薬品です。酵素の反応をブロックするとCとDの生産量が減り、その結果、血圧を下げたり、コレステロールを下げたりできるのです。細菌やガン細胞を殺すこともできます。
だから、医薬品の作用メカニズムは、「○○阻害薬」「〇〇ブロッカー」というのが多いのです。逆に、酵素の反応を促進するとCとDの生産量が増え、その結果、インスリンの分泌量を増やしたり、軟骨や骨合成を促進したり、細胞分裂を増やしたりすることができるのです。
化学反応で忘れてはいけないことがあります。AとBを大量に与えると、CとDがたくさん合成される、ということです。サプリメントの役割はまさにこの部分です。だから、サプリメントで効果があるものは確かに存在するのです。
しかし、医師の頭の中ではミネラル、特に、ナトリウムとカリウム、カルシウムなどの平衡状態のことがこびりついて離れません。たくさん摂取しても平衡状態になるだけだから、「結局は一緒だ」という錯覚です。難しい化学反応を勉強してきた結果、一番シンプルな化学反応の法則を忘れてしまうのです。
命名!「第4栄養素」
冒頭から、医師に対して辛らつな言葉を並べましたが、実は、それらは昔の話です。最近は、サプリメントを理解する医師が増えてきました。医師の本音の中に、「患者もサプリメントを利用すればいいのに」が芽生え始めています。
しかし、医師が診察室の中で、「治療のために、サプリメントを使いなさい」と話すことはできません。「サプリメント」という言葉が商売臭く、医の権威を汚すからです。サプリメントに理解を示しても、医師の立場では使いにくい用語なのです。それを解決するのが、また、私の仕事でもあります。そこで考え出した用語が、「第4栄養素」です。
三大栄養素と言えば、蛋白質、炭水化物、脂質です。それらは日ごろの食事から十分に摂取しています。だから、すべての人に公平といえます。健康の維持、増進で差が出るのは、その三大栄養素以外の栄養素です。それらを総称して、「第4栄養素」と名付けるのです。
医師は、診察室で、「あなたの病気に一応、薬を出しておきますが、第4栄養素を工夫するだけでも、治すことはできますよ」となら、語ることができるのです。