月刊メディカルサロン「診断」
健康管理学の活かし方…社会全体の観点を含めて掲載日2022年1月28日
月刊メディカルサロン2月号
ピンピン元気で長生きできるように
病気になって苦しんでいる人がいます。その病気を治療するのは医師の本来の役割です。その治療を行うための学問が治療学です。内容は、病気の部位、性状別に内科学、外科学、整形外科学、精神科学、婦人科学・・・などに分類されています。医師はその治療学を身に付けて、治療することを目的として患者と相対しています。
では、健康管理学は何を目的として患者と相対しているのでしょうか?実はこの質問がすでに間違えています。健康管理学が対象とするのは病気でない人ですから、「患者」とは言わないのです。病気でないすべての人ということになりますが、一言で言えば、依頼人ということになるのでしょうか。健康管理学は何を目的として依頼人と相対しているのでしょうか?
「依頼人がピンピン元気で長生きできるようにする」を目的としているのは間違いありません。そのためにはどうしたらいいのでしょうか?
私は、「会員とのコミュニケーション」「会員と医師との友誼関係」を重視して、依頼人(=プライベートドクターシステム会員)との飲食、ゴルフ、旅行を通じて、人間関係を深める中で人体への望みを聞き出し、その望みを実現するための研究に取り組んできましたが、その歴史と成果が、何をしたらいいのかをシンプルに物語ってくれます。
健康管理学が担う役割
- 病気との因果関係がはっきりしているものを除去してあげるのは、健康管理学の役割です。→ピロリ菌、肺炎クラミジア菌、ヒトパピローマウイルス、ヘルペスウイルスなど
- 日常生活に溶け込んで実践できる体重管理の指導を行うのは、健康管理学の役割です。→マジンドールダイエットなど
- 若々しい姿を維持するために、どのような取り組みがあるかを教えてあげるのは、健康管理学の役割です。→プラセンタ医療など
- 心の奥底から意欲が湧き、物事がおっくうでなくなり、活動的な日々を送れるようにしてあげるのは、健康管理学の役割です。→成長ホルモン医療など
- その人にとって、重大な病気を予防するための栄養素の摂取をどうするべきなのかを教えてあげるのは、健康管理学の役割です。→診療現場へのサプリメントの導入
- 身体の未来予想を語ってあげ、事前対策を打ち合わせるのは、健康管理学の役割です。→予想医学カウンセリング
- 早期発見を、最小の放射線被ばくで、費用を含めた最大効率性で行ってあげるのも、健康管理学の役割です。→当然のこと
- 加齢に伴う体力、気力、知能の衰えを防止してあげるのは、健康管理学の役割です。→成長ホルモン医療、その他さらに研究中
健康管理学の役割は、大人に対するものだけではありません。
- 子供の成長を見守るのは、健康管理学の役割です。→子供への脳機能メカニズムの教授(頭を良くする医療)
- 子供の体格の成長を見守るのは、健康管理学の役割です。→低身長治療、身長サポート
以上のように健康管理学が依頼人に果たす役割はたくさんあり、私はそれらの実現手法を研究し、開拓してきたのですが、実はもっと重要な役割があるのです。それが、平成7年に上梓した私の著書「一億人の新健康管理バイブル」(講談社)の331ページに掲載されていました。医療社会の問題を列挙した後に、その解決策を述べた文章です。
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では、どうすればいいか?
「医師と患者のあいだに死ぬまでの一生涯の友誼関係を築き上げる」
そのような観点から医療を見つめていこうと考え、平成4年7月、「医師と患者の友誼関係」を素地とした上で、健康管理というものを日常生活に密着して指導していくシステム=プライベートドクターシステムを発案し、活動し始めたのでした。放っておくと長生きできそうにない人に入会してもらい、一緒に食事し、一緒に飲酒し、ときには一緒に旅行に出かける、というように、その人たちの生活と密着しながら、こまめに指導し、定期的に採血し、その結果を会員と一緒に検討するということを繰り返しながら、長生きしてくための生活の仕方を身につけてもらえるよう努力しました。内容も発案当初は、「何かの病気で加療が必要な人へのコンサルタント」が主体でしたが、数年の歳月のなかでノウハウが蓄積し、「病気にならないために医療を活用し、その人個人にとっての最良の健康管理の方法を指導する」というスタイルへと変化しました。するとどうでしょう。一人一人の会員が、だんだんと驚くほど医療に対する知識を身につけていってくれるのです。そして、自分の健康管理に関して、一人一人が見事なまでに正確な判断を下せるようになるのです。
個別に健康管理を指導してく、いわば生涯主治医療制の健康管理指導システムを運営するなかで、日本という国が抱える、医療に対する問題を解決してく糸口を見いだしたような気がします。解決の第一歩は、患者側の医療、健康管理に対する知的レベルの向上にあるということなのです。(医療)財源的問題の解決方法もそこに秘められているのでしょう。
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全国民の健康、人体、医療に関する知識向上のため
つまり、健康管理学の役割は、突き詰めると、「全国民の健康、人体、医療に関する知識の向上」になるのです。だから、健康管理学を修めた医師というのは、依頼者に多くの健康、人体、医療の知識を与える手法を身に付けなければならないのです。
この観点からみると、大企業の産業医の役割は、「全従業員の健康、人体、医療に関する知識の向上」にあることになり、健康管理学を修めた医師がその任に就くべきであることになります。
また、最近、高額な入会金や年会費を設定している人間ドッククラブを見かけますが、そこに従事する医師は、やはり会員の健康、人体、医療に関する知識の向上をも任務とする医師でなければならず、健康管理学を修めた医師ということになるのです。
ベストチョイスを多面的な視点で考える
「健康管理学は、病気でない人を診る」と書きましたが、実は、それも間違えています。病気の人には、治療学を遂行する医師とは全く異なる観点で診なければいけないのです。
治療学は病巣を見ます。その病巣の治療を考えます。
健康管理学は人全体を見ます。当然、生活信条、生活スタイル、価値観のすべてを受け入れて、指導の在り方を考えます。
治療の現場においては、治療選択そのものが、病院にとって収益効率の良いものへと進んでいく傾向があります。新しい治療やまた、日本中に普及させたい治療の保険点数は、大きく設定されています。その辺は、保険点数を定める厚労省の思惑が関与します。その思惑に基づいて、一つの治療システムが日本中に広まりますが、一人一人の患者個人の立場では、すすめられたその治療がベストチョイスであるとは限りません。「やらなくてもいいのに」という治療をすすめられることもあれば、「あっちの治療の方がいいのだけど、この場合は病院事情を考慮してこの治療で」という治療をすすめられることもあります。
治療学はそこの病巣があれば、その治療に執着します。健康管理学は、病巣を所有する患者の価値観に目を向け、その治療のメリット、デメリットを考え、人生観全体の中での良し悪しを考えます。
患者側の立場に立って、ベストチョイスの選択となるように努力していく医師が必要です。その目的で活動する医師をセカンドドクターといいますが、健康管理学を修めて、日頃からその患者を見つめてきた医師が、このセカンドドクターとして最適です。そこにも、健康管理学を修めた医師の活躍の場があるのです。
一般的に、病気の治療現場は過剰診療に走りがちです。それにセーブをかけるのは、健康管理学の重要な役割になります。
私には、健康管理学を修めた医師が活躍する場を日本中に創り出していく使命があるのです。